学生・新卒向けのデザイン賞 グッドデザイン・ニューホープ賞 最優秀賞は、きのこ素材でものづくりをする「生えるおもちゃMYMORI」に決定!
2023.11.24
11月18日、新世代のデザイナーの可能性を切り開くことを目的とした「グッドデザイン・ニューホープ賞」の最終審査会が行われた。最優秀賞に輝いた「代替を超えるバイオ素材ー生えるおもちゃMYMORI」は、これまで既存製品の代替品として使われていたバイオ素材が主役となることでひらける未来の可能性を提案した。最優秀賞の詳細や、プレゼンテーションの様子などを紹介。
グッドデザイン・ニューホープ賞とは
グッドデザイン・ニューホープ賞は、将来のデザイン分野を担う新世代の活動を支援することを目的としたデザイン賞です。2022年度から始まり、今年度で2回目の開催となりました。
芸大・美大だけに限らず、すべての分野の学生と卒業・修了直後の新卒社会人からの応募作品が対象であるニューホープ賞は、デザインテーマの指定などもないため、大学のゼミの課題制作や卒業制作、または自主研究などから幅広いデザインが集まりました。
今年度の応募総数は415件。8月25日の一次審査を経て、10月24日には、415件のなかから入選78件、またそのなかから選ばれた優秀賞8件の受賞が発表されました。
11月18日の最終審査では、優秀賞受賞者8組によるプレゼンテーションが行われ、最優秀賞1件が決定しました。
最優秀賞「代替を超えるバイオ素材ー生えるおもちゃMYMORI」
今年度の最優秀賞に選ばれたのは「代替を超えるバイオ素材ー生えるおもちゃMYMORI」。きのこの根っこにあたる菌糸体からつくられたブロックで、子どもが自由に遊べるおもちゃキットです。
このキットは、きのこ栽培のプロセスが簡易化されているため、誰でもきのこを育てられ、型にはめることでおもちゃが完成します。きのこから自然の香りを感じたり、上手に育てられた時の喜び・愛着があるおもちゃであり、また自分なりの楽しみ方を発見できる未知のおもちゃとしてつくられています。最終的には土へと還すことができるため、サステナブルなプロダクトです。
最優秀賞受賞者である武蔵野美術大学造形構想学部クリエイティブイノベーション学科の項 雅文さんはプレゼンテーションで、これまでのバイオ素材の使われ方を見直し、バイオ素材でものづくりを楽しむことの可能性を提案。
作品タイトルにある“代替を超えるバイオ素材”には、これまで既存製品の代替品として使われていたバイオ素材が主役となることで、社会全体の生活様式の変容を促すこと、また素材自体への愛着が生まれることで、能動的なものづくり体験をつくりたいという想いを込めたと語りました。
これまで生活者の目に触れてこなかったバイオ素材の育成や活用のプロセスを、おもちゃとして遊ぶことによってクリエイティビティに溢れる次なるものづくりの道がひろがることを目指しています。
身近な社会の課題に対して、自分自身の言葉で語った最終プレゼン
惜しくも最優秀賞を逃した優秀賞7件も個人や身近な人が抱える課題解決のため、あるいは小さな発見から始まったプロジェクトなど、解像度の高い個人の視点からつくられた作品ばかりであり、デザインのパワーを感じられるプレゼンテーションとなりました。
プレゼンテーションは、1人5分。その後は審査委員11名からの質疑応答の時間が設けられています。8組すべてのプレゼンテーション終了後に、最終審査のディスカッションが行われ、最優秀賞が決定。その後は授賞式、受賞祝賀会が開催されました。
ニューホープ賞をきっかけに、次なるステップへ
授賞式では、審査委員長である齋藤精一さんからは、今後経験を重ねることによって課題の視野がひろがること、そして「ひとりのためから何百人のために広がっていくけれど、今回みなさんが考えた“誰かひとりのために”というスタート地点を忘れないでいてほしい」と総評のコメントが寄せられた。
受賞祝賀会では、受賞者同士、また審査委員や関係者と受賞者の交流が行われました。さまざまな人と交わって生まれる化学変化や、新しい発展のきっかけを得ることができる“コミュニティ”としてのニューホープ賞に参加できることも応募・受賞のメリットといえます。
また今後、受賞者には受賞プロモーションやデザイン・ワークショップなどが開催されます。この受賞をきっかけに次なるステップへの躍進がたのしみな今年度の受賞作品は以下の公式サイトに掲載しています。ぜひご覧ください!
すべての受賞結果はこちら: https://newhope.g-mark.org/award2023.html
大橋真紀
編集・執筆
ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。