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グッドデザイン賞の “今”を届ける

グッドデザイン賞の応募に込めた想い、 グッドデザイン賞の審査に込める想い、 さまざまな想いが交差し、連鎖する

「よいデザイン」を探求する プロセスを届ける

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2024年度 グッドデザイン大賞はRESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト

2024.11.05

11月5日に開催された受賞祝賀会にて、今年度の受賞対象のなかで最も優れたデザイン1件に贈られる「グッドデザイン大賞」が発表されました!受賞したのは、障がいの有無に関わらず誰もが遊ぶことのできる遊具を開発する「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」。また今年度の受賞祝賀会は、東京ガーデンシアターで例年以上に盛大に行われ、受賞展来場者による投票で選ばれた「みんなの選んだグッドデザイン」も注目の発表となりました。


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祝賀会に参加し、記念撮影をする受賞者の様子。「嬉しいね!」と喜びの声が飛び交った。

創業108年の遊具メーカーが大賞受賞!

グッドデザイン大賞とは、今年度グッドデザイン賞を受賞した1,579件のなかで、最も優れたデザイン1件に贈られる「内閣総理大臣賞」です。また大賞は、その年のデザインおよび社会の傾向を象徴する役割を担っています。

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2024年度より選出方法が変わり、グッドデザイン金賞20件のなかからデザインのプロフェッショナルである審査委員と、その年のグッドデザイン賞受賞者の投票によって選ばれました。

そして今年度、349票を獲得し、グッドデザイン大賞に輝いたのは、老舗遊具メーカー 株式会社ジャクエツによる障がいの有無に関わらず誰もが遊ぶことのできる遊具を開発する「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」となりました!

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株式会社ジャクエツは、大正5年(1916年)に幼稚園の運営から始まり、現在まで100年以上にわたり幼児教育に携わり、独自の研究成果をもとに教材教具などの企画・製造・販売を中心に行っています。

今回の「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」では、医療的ケアを必要とする子どもたちが「遊びたくても遊べない」という課題を解決しつつ、障がい児専用のデザインにならないよう徹底されています。

障がいの有無にかかわらず友だちと一緒に遊べる媒介としての遊具のあり方を追求するため、多様な個性をもつ子どもたちと、医師、ケアスタッフ、遊具デザイナー、そして地域住民というさまざまな立場の人々が分野を超えて協力し、遊具を開発しました。

審査では、「遊び」を起点に、医療・ケア・地域が協働し、誰もが自分らしく楽しいと感じられる社会づくりに貢献している貴重な事例として評価されました。

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発表後の受賞インタビューでは、「小さく始めたプロジェクトが、こんなに大きな賞に選ばれるとは思わなかった」「たくさんの人に助けてもらいました」とプロジェクトをともに実現した仲間を讃えました。

審査委員長からは選考理由として「今年のテーマである勇気と有機のあるデザインを体現しているプロジェクト。長年、“インクルーシブ”とは言われているけれど、実際簡単なことではない。法律の問題や気持ちの問題など、さまざまな乗り越えないといけない壁はあったはず。小さなチームからはじまり、広がっていく、まさに今の時代に必要な力だと思います」とコメントしました。

受賞発表後のプレゼンテーションでは、一人の医療的ケア児が、今までの子どもとは異なる遊具の遊び方をしている姿に感銘を受け「実はみんな遊びを持っている」という気づきを得たなど、遊具研究のプロセスを紹介しながら「世の中の「しょうがない」「仕方がない」という当たり前を更新し、誰もが好きなように遊んで、幸せを感じる次の優しい社会を育てると信じています」と締めくくりました。

また、受賞祝賀会のなかでは、「みんなの選んだグッドデザイン」の投票結果の発表も行われました。この新企画は、金賞20件のなかから、受賞展来場者+祝賀会参加者(受賞者+審査委員)により選ばれたグッドデザイン1件です。

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祝賀会参加者が、投票する様子。

みなさまから選ばれたのは、多世代共生の複合型福祉施設の「深川えんみち」でした!高齢者デイサービス・学童保育クラブ・子育てひろばの3つの事業からなる、旧斎場を改修した複合型福祉施設。施設の動線や、時間の使い方などさまざまな「シェア」を生む仕組みによって、お年寄りから子どもたちがみんな「顔馴染み」となることを実現しています。

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発表後のインタビューでは、「設計者だけの力だけでは実現しないプロジェクト。受賞展にも、おじいちゃんおばあちゃんや、学童の子どもたちも来てくれて、自分たちの暮らしている場所を喜んでくれていたことがとても嬉しかったです。受賞展来場者の方々を始め、みなさまに選んでいただいて感動しています」と語りました。

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金賞受賞者20名で記念撮影。

グッドデザイン“コミュニティ”を楽しめる祝賀会

受賞祝賀会には、受賞者や審査委員など約3,000人のデザインに関わる人々が集まり、華々しく開催されました。グッドデザイン賞受賞を通して参加できる日本最大級のデザインコミュニティといえるのではないでしょうか。

会場では、受賞者同士が交流する姿も多く見られ、また記念撮影ができるさまざまなフォトスポットなども用意されています。各表彰が行われるステージ中央には巨大なGマークも設置され、盛大に受賞が祝われました。

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今後、受賞者には受賞対象1件につき1枚の表彰状と、今年の受賞年鑑が贈られます。またGマークの使用など、受賞後のサポートもさまざま用意されています。グッドデザイン賞の活用についての詳細は、公式サイトをご確認ください。

また今年度の受賞対象はすべて、受賞ギャラリーにて公開されています。ぜひご覧ください!

2024年度受賞ギャラリー:https://www.g-mark.org/gallery/winners

大橋真紀

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。