今回のお訪ね先
株式会社ビタミンアイファクトリー
いい道具が子どもの感性を育てる
2024.04.26 【PR】
近年、子どもの体力低下が懸念されています。運動を含む神経機能のおよそ8割が発達するといわれている幼児期。そのかけがえのない成長期に、体力づくりや五感に刺激を生むきっかけとなるよう、「へんしんバイクC14」は開発されました。ペダルのないキックバイクから、小学校に入るまで自転車として乗用することまでを見越した本格的な自転車です。「親」「子」両ユーザーのさまざまなフェーズに寄り添いつつ、「自転車に乗れるようになった!」という体験を通して成長を促すとして、2023年度のグッドデザイン賞に選ばれました。子育てのプロセスからデザインしているという渡辺未来雄さんに、開発への思いを語っていただきました。
自転車デビューはなぜ難しかったか
― 本日は「へんしんバイク」の駒沢ショールームにお伺いしています。「へんしんバイク」とは、1台でペダルがないキックバイクとペダルを付けた自転車の2役を兼ねた、2歳から乗れる自転車です。子どもたちは、ペダルがない状態ではサドルにまたがって、地面を蹴って進んでいます。楽しそうですね。
― 私たちが子どもだった頃は、三輪車から始め、補助付きの自転車に乗り替えて、補助を外してからは転倒しながら、自転車の乗り方をマスターしたものです。
渡辺未来雄 自転車は泣きながら乗るもの、特訓して乗るような印象がありましたよね。実は、補助輪で練習していると、その癖が付いてしまうので、補助輪を外していきなり漕ごうとしても、できないのが当たり前なんです。
― そうなんですか。子どもながら、乗れないのは自分のがんばりが足りないのだと思っていました。問題は子どもではなく、ほかにあったということですね。
渡辺 ハードとソフトと、両面で問題があるんです。3歳児で子どもの体重はおよそ13~14kgですが、小児用の16インチの自転車は、12~15kgあります。子どもが、自分の体重と同じほどの自転車を操るのは、容易なことではありません。
ソフト面で言うと、自転車デビューするには、バランスを取りペダルを回す必要がありますが、2つを同時に行うのは、大人でも大変ですよね。だったら、それぞれ身に付けやすいように、ペダルなしのキックバイクで遊び、バランスが取れたら、あとからペダルを付ければいいと考え、「へんしんバイク」の形になりました。
― 先ほど「キックバイクが上達すると、かけっこが速くなるんです」とアドバイスされていました。これも知りませんでした。
渡辺 キックバイクとかけっこは、上達するポイントが共通しているのです。ハイハイをして歩き方を覚えていくように、幼児期に体験しながら覚えていくことはたくさんあります。キックバイクでかけっこは速くなるし、自転車で運動神経は発達するし、交通ルールを学ぶこともできます。
でも2歳児は15分で飽きてしまいます。初めてのことは、神経回路がないので簡単にはできません。パパ、ママもどうしたらいいかわかりません。だからこの体験型ショールームでは、初めての乗り方から、ブレーキやペダルの取付けまで、お子さまが興味をもつようなレッスンをしているのです。
― ワクワクしながら学んでいけるよう、工夫されているのですね。子どもの視点に立った考察はこれまで見落とされがちでした。「自転車デビューの壁」にもなぜ、気付けたのでしょうか。
渡辺 もともと僕は理系で、観察するのが好き、論理的に考えるのが好きな性分だからかもしれません。高校から電気科でロボットアームや電気自動車をつくり、大学卒業後は、精密機器のキーエンスに入社し、ものづくりの現場を山ほど見てきました。
工場のラインで故障が発生したり、人の作業に不具合があったりすると、原因を突き止めようと、まず観察をし、どこに問題があるのか分析して解決策を考え出しますよね。自転車練習に対して、僕はそれを十数年やり続けています。そこまで本気で考えている人は、あまりいないかもしれません。
― 自転車と異なる分野にいたからこそ、気付くこともあります。キーエンスは高い利益率で、メーカーの平均年収では日本のトップを走る企業として知られています。
渡辺 はい。仕事では結果を出すことができたのですが、当時は朝から深夜まで働いていました。子どもが生まれて幸せなはずが、抱っこしていないと寝ない子で、妻と義母が夜通し交代で抱いてヘトヘトになっていました。僕が抱いても泣くばかりで、寝かしつけることすらできなかった。
「自分は何をやっているんだろう」と、会社を卒業することを決めました。中学生の頃から、仕事だけではなく、家庭と仕事の両方を大切にして、自分の成功があると考えていたからです。
達成感は人の根っこを変える
渡辺 現在の仕事への転機は、息子が10歳の時に訪れました。僕も妻も運動が苦手。息子は1年生から少年野球のチームに入っていましたが、私たちの子なので運動に苦手意識があり、辞めたいと言うのです。
息子に自信をつけさせたいと、学校で1番になれるものはないか考えました。ある日、眠れないというので散歩すると、平気で二駅分の距離を歩いてしまった。そこでテレビで見たホノルルマラソンが思い浮かびました。
実はホノルルマラソンは制限時間がなく、自分さえ諦めなければゴールできます。もし完走できたら、誰もやっていないので、学校で1番になれるのです。
それから親子で練習し、12月、ホノルルマラソンに家族で参加しました。青い海、青い空の下で、沿道の声援やランナーとのハイタッチに背中を押されながら、見事完走できたのです。息子はその後、中学を受験することになり、がんばって無事に合格しました。
― わずか10歳でフルマラソンを完走とは、驚きです。よくできましたね。
渡辺 ホノルルマラソンは初心者が多いのです。42.195kmという未知の世界のスタートラインに、みな自分を変えたいという思いを胸に立つ。途中足が吊ったり、力尽きたり、諦めたりしながらも、周りのランナーや沿道の人に応援されて、もう一歩を踏み出していく。
速いとか遅いとかではなく、ひとつのゴールに向かい互いに応援しあいながら3万人が走るのです。だからゴールしたら、清々しい笑顔になって、自信もみなぎってくるんです。そこでは全員が金メダルです。あまりに感動して、僕は10年続けると決心しました。やがて参加したいという人も現れ、ツアーを組んで行くようになったのです。毎年走りながら、人生の縮図だなぁと思っていました。
― 無理だと諦めていたことが「できる」に変わる経験を数多く重ねてこられたのですね。
渡辺 学生時代カウンセラーになろうと思っていたので、よく人の悩みを聞いていました。悩みを聞いたあとは元気になるのですが、一週間もすると同じことを言う人が少なくなかった。
ところが、ゴールすると達成感からか、考え方が根っこから変わっているんです。実際に、起業したり、将来への不安が気にならなくなったりする人々の姿を目の当たりにして、体験型教育を当たり前にしたいと考えるようになりました。
こんな小さいの、売れないよ
渡辺 その後、ホノルルマラソンを走った友人がトライアスロンチームをつくるというので、僕も手を挙げました。実はカナヅチでした(笑)が、 チームの仲間に乗せられて、奇跡的に1.5km泳ぐことができました。そこで初めてロードバイクに乗ったのです。そのスピード感や楽しさは自分が知るママチャリと違い、めちゃくちゃおもしろい乗り物じゃないかと驚いたのです。
― そこから、キックバイクや自転車を研究されるわけですね。
渡辺 ヨーロッパに木製のキックバイクはありましたが、自転車デビューできる方がよいと考えました。そこで、大人になって使うのと同じ前後ブレーキで、日本人の3歳の子どもの半分の重さのバイクを中国で工場を探してつくりました。
けれども完成したバイクを持って自転車店を訪ねたら、300軒回って、ただの一軒も扱ってくれなかった。「こんな小さいの、売れないよ」と、どれだけ言われたことか。
前職がファブレス(工場を所有せず行う製造業)で、新しいものを生み出すノウハウには自信があったので、「いいネタができた」(笑)と、周囲には言っていたんです。やがては、「昔は補助輪付きの自転車って、あったね」と、いうような世界が来ると思いながら。
― 30分で乗れるというノウハウを確立し、レッスンを展開していらっしゃいます。
渡辺 おかげさまで自転車教室は、4時間待ちになるほど行列ができ、「へんしんバイク」もヒットしました。しかし、売れることで次の課題が出てきたのです。
初代「へんしんバイク」は、後輪を外してペダルを取り付ける構造で、安全のため自転車店での取り付けを推奨していました。しかし、お店により対応が異なることや、商店街の自転車店も減少しており、保護者自身が取り付けできて、チェーンの緩みも調整できる第二世代のペダルシステムを開発しなければいけないと気付いたのです。
トライアスロンへの挑戦から、最高品質のバイクが生まれる
― 2023年のグッドデザイン賞を受賞したのは、その第二世代となる「へんしんバイクC14」です。開発した機構で特許を取られているそうですね。どのように開発したのか、教えてください。
渡辺 大人にとって、自転車は移動手段なのでタイヤが大きい方が楽でスピードも出ます。しかし、幼少期はバランス感覚や体力をつけ、交通ルールを身につける時期。それにはタイヤは小さい方がいいんです。オリンピックのBMXも小径タイヤですよね。
しかし、この考え方は一般的ではありません。子ども向けの衣類は大きめのものを買うことが多いのと同じで、自転車店でも大きめの自転車を薦められます。
そもそもキックバイクと自転車は求められるものが違います。キックバイクは3歳で不安なく始められるように、サドルを下げて踵が着く必要があります。自転車のほうは、慣れてサドルを上げたら、サイクリングに行きたくなるくらい、疾走感を感じられる乗り物にしなければならない。この相反する要素の統合が必要でした。
悩み抜いた末に辿り着いたのが、200年の伝統を持つ、ダイヤモンドフレームです。よく見るスタンダードな自転車の形で、軽くて剛性があるので、普及しているわけです。次は、どうしたら後輪を外さずにチェーンを取り付けできるか。毎日自転車通勤しながら、前を走る自転車の後ろ姿を見て、考えていました。ある日、シートステー(サドルと後輪をつなぐ部分)を脱着可能にするシンプルな答えに辿り着いたのです。
― これをデザインしたのは、ケルビム(CHERUBIM)の今野真一さんです。競輪の自転車などプロユースをハンドメイドで行うフレームビルダーで、第一人者として世界にその名が知られています。どのような接点があったのでしょうか。
渡辺 今野さんと出会ったのは、2013年。ホノルルマラソン10年目の年です。カナヅチからトライアスロンに出て以来、年に一度の挑戦は、仲間ともども年々エスカレートしていました。
1週間で250㎞走る世界一過酷なマラソンと言われるサハラマラソンを経て、2013年には南極マラソンに参加しようとなり、せっかくだから南極トライアスロン大会をやりましょうと主催者に提案していました。
― 南極でトライアスロンなんて、できるんですか!?
渡辺 さすがに泳げないので、クロスカントリー、バイク、マラソンですね。主催者もノリ気で、開催は決定しました。ヨーロッパの自転車メーカーもノリ気だと聞き、僕らは南極マラソンと人類初の南極トライアスロンに挑戦しますと発表しました。
しかしその後、主催者から連絡があり、「自転車はつくれない。なぜなら、南極では自転車が走ったことがないから」と告げられ……。途方に暮れていた時、偶然、青山で自転車部品のシマノさんが営むカフェに入り、世界一美しい自転車を見つけました。ハンドメイドだとわかり、この人なら、南極用のバイクをつくってくれるに違いない、そう確信してケルビムさんに電話をしたのです。
渡辺 誰も行ったことのない南極を想定し、南極用バイクを開発しました。アイスバーンか、パウダースノーか、深い雪の場合は、キックバイクのように歩きながら進もうか、など今野さんやケルビムのスタッフさんと話し合いながら。
そのバイクのおかげで、僕は人類初の南極トライアスロンで優勝することができました。子どもの頃、虚弱体質といわれ、帰宅部で運動に縁のなかった僕が10年で世界一になる。人生って面白いですよね。
子どもの世界を変えていく「へんしんバイク」
― 最高の技術者で厳しい審美眼があるからこそ、解を見いだすまで10年の時間が必要だったのかもしれません。
渡辺 完成した「へんしんパイクC14」(3~7歳用)には、子ども自転車とは思えない存在感が生まれました。旧モデルと比較して、子どもが自分から、これがいいと選ぶ乗りやすい自転車になりました。後輪を外さずにペダルの脱着ができ、チェーンも簡単に張ることができます。
― 今野さんのアトリエで生まれる自転車は、大人が憧れる一級品です。あえて子どもにはよいものを使ってもらいたいという思いがあったのでしょうか。
渡辺 1/100秒を求める競輪選手の世界と、乗りやすさや美しさなどに一流の本物を求める大人と、そのどちらも理解しているケルビムさんが、子どものための“ファーストバイク”をつくってくれたら、どうなるのだろう、と思ったのです。
感受性の土台が育まれる3~6歳に、乗り物に乗る楽しみを味わえたら、その子は将来、どんな感性をもつ大人になるだろうか。
私たちが2歳から自転車デビューまでに必要な要素を十数年観察してきた知見と、大人の自転車に必要な感性を統合してつくり上げたのが、「へんしんバイクC14」です。
― 見た目のかっこよさはもとより、高い機能性で子どもをサポートし、乗る楽しさから感性と運動能力を育む。高い品質で長く使いたくなり、本物の価値やものを大切にする心も培われる。まさに総合的な視点でのグッドデザインですね。
渡辺 この美しさを認めていただきたい一心で、グッドデザイン賞に応募しました。実際に、総合的に評価していただいたと思います。高品質のバイクとはいえ、プロの領域でしか伝わらなかったことが、受賞により、一般の方にも「やっぱり、かっこいいね」と、伝わったようです。多くの人たちが、そうやって伝え合うコミュニケーションツールとして、グッドデザインのマークは機能していると僕は考えています。
「体験」が子育ての大切なプロセス
― 教室では、子どもたちはもとより、お父さんお母さんも楽しそうにしていたのが印象に残っています。最初は遠慮していた男の子は、コツを掴み、最後は積極的になっていました。
渡辺 私たちにとって、デザインとは、単なる製品の話ではないんです。購入前の自転車教室に始まり、親子で「へんしんバイク」の箱を開けて組み立てる過程や、一緒になって乗る苦労と楽しさを共有すること、そして親が励まし「できたね」と成功を祝うこと。
自転車デビューのこうしたプロセスを親と子でともに“体験”することは、大切な子育てのひとつだと考えています。だから、そのすべてをデザインすることが、私たちのデザインだと思っているのです。
この体験が、親子の絆を深め、お子さんに自信を与え、挑戦する勇気を育み、未来へつながっていくと信じています。
この記事は、株式会社ビタミンアイファクトリーと.g Good Design Journalの企画広告です。
へんしんバイクC14
ビタミンアイファクトリー
3歳から3年間乗り続けられる自転車で、1台でキックバイク、ブレーキ、ペダル練習、自転車デビュー、サイクリングまで、親子で遊びながら自転車の乗り方を身に付けることができる。梱包箱はペダル回しスタンドに活用できる。自宅で5分でペダル取付ができる。
- 受賞詳細
- 2023年度 グッドデザイン賞 幼児用自転車「へんしんバイクC14 with ペダルくん」 https://www.g-mark.org/gallery/winners/16416
- プロデューサー
- 株式会社ビタミンアイファクトリー 渡辺未来雄
- ディレクター
- 株式会社ビタミンアイファクトリー 渡辺未来雄
- デザイナー
- 有限会社今野製作所 ケルビム マスタービルダー 今野真一
石黒知子
エディター、ライター
『AXIS』編集部を経て、フリーランスとして活動。デザイン、生活文化を中心に執筆、編集、企画を行う。主な書籍編集にLIXIL BOOKLETシリーズ(LIXIL出版)、雑誌編集に『おいしさの科学』(NTS出版)などがある。
川村恵理
写真家
美術系専門学校を卒業後、スタジオ勤務や写真家助手を経て2017年に写真家として独立。以後、コミッションワークを主軸としつつ、作品制作にも重きを置いた活動を展開している。