「よいデザイン」がつくられた 現場へ
よいデザイン、優れたデザイン、 未来を拓くデザイン 人々のこころを動かしたアイデアも、 社会を導いたアクションも、 その始まりはいつも小さい
よいデザインが生まれた現場から、 次のデザインへのヒントを探るインタビュー
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デジファブで建築世界を変革する(前編)
ものづくりを加速させると注目されるデジタルファブリケーション(デジファブ)。特に建築分野での広がりは、目覚ましいものがあります。今回は、先進事例をつくり出している建築集団VUILD(ヴィルド)を訪ねます。2020年度グッドデザイン金賞に選ばれた宿泊施設「まれびとの家」は、地域の木材をデジタル切削加工機で精緻にカットし、プラモデルを組み立てるようにつくりあげた意欲作でした。創業者の秋吉浩気(こうき)さんは「建築の民主化」を実践し、誰もがつくり手になれる社会の実現に向けて、大胆な実践を続けています。見据えているのは、日本の建築産業を変えていくこと。それは創造性が伝播していく活動でもありました。
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社会に見過ごされた存在に光を当てる
日本では企業数の99.7%、就業人口の70%を占めるのが中小企業です。その事業承継は社会課題でありながら、これまで予期せず経営を引き継ぐケースの困難は見過ごされてきました。中小企業を顧客とする法人保険のエヌエヌ生命保険は、突然経営を引き継ぐ女性を支援するサービスを3つの柱で展開しています。ユーザー視点のデザインアプローチが評価され、2024年度のグッドデザイン賞に選ばれました。プロジェクト立ち上げから関わるカスタマーエクスペリエンス部部長の小橋秀司さん、運営に携わるマネージャー林佳寿子さん、森住由衣さん、山中祐里奈さんに、この新しい取り組みについて伺いました。
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書店でできる、楽しい寄付体験
全国のさまざまな書店で、大変な境遇にいる子どもたちに向けて、クリスマスや誕生日などの機会に新品の本を届けるプロジェクトを実施しているのをご存じでしょうか。「ブックサンタ」という社会貢献活動で、2024年度グッドデザイン・ベスト100に選出されています。主催は「あなたも誰かのサンタクロース」を合言葉に2008年より活動するNPO法人チャリティーサンタ。書店や子ども支援団体と連携し、これまでに27万冊の本が寄付で集まりました。楽しい寄付体験であるとして、草の根的に広がっています。子どもたちと、「本を贈りたい大人」をつなぐ仕組みは、どのようにデザインしたのでしょうか。チャリティーサンタの清輔夏輝さん、NICリテールズの野上由人さん、デザイナー・イラストレーターのかわいちともこさんに伺いました。
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デザインが樹脂の可能性を広げる (後編)
2018年度のグッドデザイン・ベスト100に選ばれた、調理できる器「9°(クド)」。使い捨てにされることの多い樹脂(プラスチック)の価値を向上させたい、という思いから始まったプロジェクトです。樹脂の機能は生かしつつ、樹脂の新たな表情を引き出し、ファンを獲得しています。なぜそれができたのか。カブ・デザインの齋藤善子さん、一戸樹人さんに、発想の源と彼らのデザインワークについて語っていただきました。
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デザインが樹脂の可能性を広げる (前編)
「樹脂の価値を向上させたい!」。展示会で出会ったデザイナーと技術者が交わしたその言葉から、ブランド「9°(クド)」は生まれました。2018年度のグッドデザイン・ベスト100に選ばれた、調理できる器です。使い捨てにされることが多いプラスチック(樹脂)を、その寿命と同じくらい長く使い続けてもらいたいとの思いが根底にありました。どのようにしてブランドが構築されたのか。小さなきっかけから紆余曲折しながら思いを形にしていくポイントをカブ・デザインの齋藤善子さん、一戸樹人さんに語っていただきました。
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理想郷は、つくれる(後編)
本来は行政が担うような公共性の高い福祉事業を実現しているのが、ジョンソンタウンです。そこに住む人と働く人、さらにそこで住まいを創造する人が、渾然一体となったユニークなまちで、子育て家族やクリエイター、障害者、高齢者が活き活きと働きながら暮らしています。前編では、その歴史とデザインポイントを伺いました。後編では、どのようにして、インクルーシブなまちづくりが可能になったのか、所有・管理者の磯野商会 磯野章雄さんと、計画・設計した渡辺治さんに語っていただきました。
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理想郷は、つくれる(前編)
もともとそこにあったものと、すぐに使えるありあわせを集めて転用し、新しいものにするという、ブリコラージュを行う建築手法が近年、注目されています。昭和期の在日米軍用の住宅地を再生させたジョンソンタウンはその好例で、意図的なデザインからは出てこない懐の深さがある、誰にでも開かれた"まち"です。さまざまな世代が住み、働き、交流する、コミュニティのあるタウンですが、かつてはスラム化していました。なぜ、理想的な環境へと変身できたのか。所有・管理者の磯野商会 磯野達雄さん、磯野章雄さんと、計画・設計した渡辺治さんに語っていただきました。
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いい道具が子どもの感性を育てる
「へんしんバイクC14」は、ペダルのないキックバイクから、小学校に入るまで自転車として乗用することまでを見越した本格的な自転車です。「親」「子」両ユーザーのさまざまなフェーズに寄り添いつつ、「自転車に乗れるようになった!」という体験を通して成長を促すとして、2023年度のグッドデザイン賞に選ばれました。子育てのプロセスからデザインしているという渡辺未来雄さんに、開発への思いを語っていただきました。
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イカだってデザインしてほしい(後編)
2023年度のグッドデザイン金賞には、意外なラインナップが入りました。エンドー「げそ天」、イカの下足(げそ)の天ぷらです。地域に密着した商店が、大型スーパーや量販店の出現により打撃を受け、消えていく。山形県のスーパー、エンドーもかつてはそんな苦境のなかであえいでいました。起死回生できたのは、地域のソウルフード・げそ天とデザインが結びついたから。人気商品が誕生し、今や県外からも客が訪れるスーパーとなりました。クライアントとクリエイターが同時進行で創造を積み重ね、拡張していく。その秘訣に迫ります。
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イカだってデザインしてほしい(前編)
2023年度のグッドデザイン金賞には、意外なラインナップが入りました。エンドー「げそ天」、イカの下足(げそ)の天ぷらです。地域に密着した商店が、大型スーパーや量販店の出現により打撃を受け、消えていく。山形県のスーパー、エンドーもかつてはそんな苦境のなかであえいでいました。起死回生できたのは、地域のソウルフード・げそ天とデザインが結びついたから。人気商品が誕生し、今や県外からも客が訪れるスーパーとなりました。クライアントとクリエイターが同時進行で創造を積み重ね、拡張していく。その秘訣に迫ります。
企画・編集
石黒知子
『AXIS』編集部を経て、フリーランスとして活動。デザイン、生活文化を中心に執筆、編集、企画を行う。主な書籍編集にLIXIL BOOKLETシリーズ(LIXIL出版)、雑誌編集に『おいしさの科学』(NTS出版)などがある。