「よいデザイン」がつくられた 現場へ
よいデザイン、優れたデザイン、 未来を拓くデザイン 人々のこころを動かしたアイデアも、 社会を導いたアクションも、 その始まりはいつも小さい
よいデザインが生まれた現場から、 次のデザインへのヒントを探るインタビュー

かるたから始まるオープン・イノベーション—SNS時代に子どもの安全を守るために
メッセージは、発するだけでは一方通行となってしまいがちです。特に、SNSや生成AIが日常に入り込むいま、子どもを取り巻く情報環境は大きく変化しています。だからこそ、大人たちが子どもの日常に視点を置き、受け取ったメッセージを自分ごととして考え、行動へとつなげていけるような「場」が求められています。「性被害やっつけたるわファミかるた SNS編」は、こうした問題意識のもと、単発の啓発活動としてではなく、地域の催しの一要素として実践されてきました。産学連携にとどまらず、小学校やPTAと結びつくことで、取り組みは社会へと開かれています。親子が声を出し、同じ時間を過ごすなかで、かるたは一方的なメッセージから共有される体験へと変わります。今回は、京都市立下鳥羽小学校での実践を取材しました。

産学連携で「タブー、やっつけたるわ」
子どもの性被害低減への対策は、深刻な社会課題でありながら、長年タブー視されてきた領域です。企業が正面から向き合うにはレピュテーションリスクが高く、結果として対策は限定的な広がりにとどまってきました。この課題に、産学連携というかたちで向き合ったのが、アイシンと立命館大学による共同研究プロジェクトです。この取り組みから「性被害やっつけたるわファミかるた SNS編」が生まれ、2024年度グッドデザイン賞を受賞しています。一度聞いたら忘れられないこの名前には、本プロジェクトの出発点となる切実な問題意識と、行動への意思が込められています。なぜ、この名前を選んだのか。なぜ、このテーマに産学連携というかたちで向き合うことができたのか。プロジェクトを支えた株式会社アイシン シニア・エグゼクティブ・アドバイザーで、立命館大学デザイン科学研究所 上席研究員の鈴木研司さんと、発案者である立命館大学の山田貴子さんに伺いました。

道からつくったフードコート
玉川髙島屋S.C.(ショッピングセンター)という商業施設の一角にありながら、フードコート「P.」は目的を定めて行く場所ではありません。コーヒーを飲みに立ち寄ってもよく、何も買わずに通り抜けてもよい。普段着にサンダルでも、少し背筋を伸ばした装いでも、同じように受け入れてくれる。二子玉川の通りに生まれたこの場所は、そうした自由を肯定する空間です。このプロジェクトの合言葉は「完成しない街角」。完成をゴールにせず、時間帯や季節、人の使い方によって更新され続ける通りづくりが構想されました。本稿では、ディベロッパーである東神開発と、グラフィックデザインを担ったCEKAI、ランドスケープとインテリアデザインを手がけたDDAAへの取材を通して、「P.」がどのような考え方と決断の積み重ねによって形づくられてきたのかをたどります。

問いを立てる力を、AIと取り戻す
企業の中に眠る技術やアイデアを、次の事業につながる「問い」へと変換する。そのために開発されたのが、2025年3月にリリースされた「共創ナビivan(イワン)®」。知財・AI・人の思考をつなぐ新たなプラットフォームです。「共創ナビ ivan®」(以下「ivan」)は、オープンイノベーションを推進し、社内外の技術や知的財産の利活用に取り組んできた三菱電機 知的財産センターと、共創のフレームワークを提唱してきたHackCamp、そして知財の人材育成を担う知的財産研究教育財団という、異なる経験知が結集して生まれました。ivanはAIを思考のパートナーとして活用しながら、知財や技術情報を起点に議論を深め、問いを立ち上げていくプロセスを支援する点で注目されています。AIと人との共創によって、新規事業創出に至るまでの「考え方」そのものを更新しようとしています。

農のヒーローをデザインする (後編)
農業にデザインを導入し、生産者自身のブランドづくりを支援する、「さがアグリヒーローズ」。その独創的な取り組みから、2022年度グッドデザイン・ベスト100を受賞しました。前編では、佐賀県が行政にデザインを組み込み、4年間という長期伴走型で農家のブランドづくりを支援する仕組みを紹介しました。後編では、現在進行中の二期(2023〜2026年)が直面している課題、一期との違い、そしてデザインが人と地域をどう変えているかに迫ります。

農のヒーローをデザインする (前編)
農業にデザインを導入し、生産者自身のブランドづくりを支援する――。そんな独創的な取り組みから、地域の新しい価値を生み出しているのが佐賀県の「さがアグリヒーローズ」です。単年度の補助事業が主流のなかで、あえて4年間の長期伴走を掲げ、農家とデザイナーがともに構想し、商品を育てていくという仕組みを採用。1次産業とデザインの協働によって誕生した数々のブランドが注目を集め、2022年度グッドデザイン・ベスト100を受賞しました。本稿では、事業の立ち上げから第一期の成果までを、佐賀県農業経営課の牛島裕美さん、佐賀県さがデザインの古賀一生さん・佐﨑智華さん、プロデューサーの江副直樹さん、デジマグラフの羽山潤一さん、そしていとう養鶏場「PICNIC」の伊東大貴さんに伺います。

暮らしを変える傘のイノベーション (後編)
暮らしの「ちょっと不便」を見逃さず、独自の発想で解決する――。そんな姿勢から数々のヒット商品を生み出してきた株式会社マーナ。2023年度グッドデザイン・ベスト100に選出された「Shupatto(シュパット)アンブレラ」は、傘の構造そのものに革新をもたらした画期的なプロダクトです。前編では「手を濡らさずにたたむ」という発想から生まれたこの傘の開発秘話を伺いました。後編では、商品開発の背景にある「マーナのデザイン思想」を解き明かします。

暮らしを変える傘のイノベーション (前編)
暮らしの「ちょっと不便」を見逃さず、独自の発想で解決する――。そんな姿勢から数々のヒット商品を生み出してきた株式会社マーナ。なかでも「Shupatto(シュパット)アンブレラ」は、傘の構造そのものに革新をもたらした画期的なプロダクトです。折り畳み傘や意匠性の競争が主流のなか、「手を濡らさずにたたむ」という発想から生まれたこの傘は、閉じると同時に一気に生地がまとまるという新しい体験を提案します。そして2023年度グッドデザイン・ベスト100に選出。同製品の開発をリードした谷口諒太さんに、着想の瞬間から5年に及ぶ開発過程と製品化に至るまでの試行錯誤を伺いました。

ネコたちがデザイナー。私は伝える役目です。(後編)
太野由佳子さんは、ネコ好きが高じてクロス・クローバー・ジャパンを起業しました。前編では、ネコの気持ちになり人間の都合を優先しない商品開発について伺いました。近年、ネコの平均寿命は飛躍的に伸びていますが、反面、新たな課題も生じています。後編では、ネコを起点に広がっていく世界について語っていただきます。

ネコたちがデザイナー。私は伝える役目です。(前編)
ネコと人間の関係は古く、古代、農耕を始めて増えたネズミを狙いに、人里にネコがすみ着いたのが始まりとされます。近年、ネコの平均寿命は飛躍的に伸びていますが、反面、新たな課題も生じています。太野由佳子さんは、ネコ好きが高じてクロス・クローバー・ジャパンを起業し、ネコ目線の商品開発を行っています。ネコ目線とはどんな目線!? ネコを起点にした社会づくりまで視野に入れたその活動について語っていただきました。
企画・編集
石黒知子
『AXIS』編集部を経て、フリーランスとして活動。デザイン、生活文化を中心に執筆、編集、企画を行う。主な書籍編集にLIXIL BOOKLETシリーズ(LIXIL出版)、雑誌編集に『おいしさの科学』(NTS出版)などがある。