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「よいデザイン」がつくられた 現場へ

よいデザイン、優れたデザイン、 未来を拓くデザイン 人々のこころを動かしたアイデアも、 社会を導いたアクションも、 その始まりはいつも小さい

よいデザインが生まれた現場から、 次のデザインへのヒントを探るインタビュー

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今回のお訪ね先

株式会社クロス・クローバー・ジャパン

ネコたちがデザイナー。私は伝える役目です。(後編)

2025.08.15

太野由佳子さんは、ネコ好きが高じてクロス・クローバー・ジャパンを起業しました。前編では、ネコの気持ちになり人間の都合を優先しない商品開発について伺いました。近年、ネコの平均寿命は飛躍的に伸びていますが、反面、新たな課題も生じています。後編では、ネコを起点に広がっていく世界について語っていただきます。

前編はこちら


もっと早く気付いてあげたかった

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グッドデザイン賞を受賞した「うちのねこといっしょ」(2023年度)。いつでも気軽にネコの健康をチェックできるようにしたいと、太野由佳子さんが開発した。

— 2023年度グッドデザイン賞の「うちのねこといっしょ」は、ネコの健康状態を自宅でチェックできる検査キットです。このような専門的な領域まで着手されているとは驚きました。開発の経緯を教えてください。

太野由佳子(クロス・クローバー・ジャパン 代表取締役) この30年でネコの寿命は3倍になりましたが、それにより病気になるネコも増えてしまいました。闘病中のネコが使うエリザベスカラーや介護用の食器などを開発しましたが、飼い主さんから話を聞いていると、皆さん「もっと早く病気に気付いてあげられればよかったのに」と口にするんです。

ネコは病気があっても、我慢強いのでよほどひどくならない限り、表情や態度で表すことはありません。健康そうにみえても、実際には腎臓病や糖尿病、歯周病に罹患しているかもしれない。病院に連れて行った時には、すでに末期的な状態になっているケースも少なくありません。

これまで、そうした病気は病院でしか調べることができませんでした。もし自宅で気軽に検査することができたら、早期治療につながるのではないかと期待して、開発し始めたのです。

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ネコの健康状態は、目視だけでは判断しにくい。

— 獣医に連れて行くのも、飼い主にとっては簡単なことではありません。連れて行く時間をつくり、公的な保険はないので費用もかさみます。それにネコも嫌がることが多い。定期的に自宅でチェックできたら、飼い主の負担も軽減させることができますね。

太野 そうなんです。気軽に検査できることが、ネコの健康保持につながると考えました。また新たな知見もあり、以前よりもサポートする方法が見えるようになってきています。近年、歯周病は慢性腎不全に影響を及ぼすということが、複数の獣医学研究によって報告されているんです。口内の健康を保つことの重要性もわかってきました。

このキットには、唾液で口腔内のpH(酸性度)やHb(ヘモグロビン)値を測定し、歯石や歯周病のリスクをチェックするものと、尿検査で糖尿病や腎臓病のリスクを確認するものがあります。

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検査キット「うちのねこといっしょ」は、写真右上の「水質検査キット おみずちょうだい」、同下「尿検査キット おしっことるよ」、左下「口腔内検査キット おくちあーん」で構成される。

太野 あわせて、ネコの飲料水の硬度を検査するキットもつくりました。ミネラルやカルシウムが多く含まれるミネラルウォーターなどの硬水は、人体にはよくてもネコの場合は結石を誘発するので、腎臓病のリスクを高めてしまいます。ネコには軟水を与え、その飲料水の硬度もあらかじめ確認しておくことを推奨しているんです。

軽やかにジャンルを横断する

— 食器やウェアなどの日用品から医療品の開発となると、これまでと異なるプロフェッショナルの協力が不可欠です。

太野 幸運なことに、盛岡市で体外診断薬を開発しているセルスペクトと出会ったことが後押しとなりました。POCT(迅速臨床検査)分野の技術力に定評があり、人間用の検査キットを開発している企業です。しかもペット向けに応用することに興味を持っていたのです。

同社は麻布大学にある「いのちの博物館」の館長、 島津德人教授からの依頼を受けて、人間用のキットで犬猫以外の動物のpHを計測していました。動物の歯周病を研究するためです。そのつながりで、私たちの開発でも島津先生に監修をお願いしています。さらに、科学実験教材を開発している東北バイオエンジニアリングにも協力を依頼し、共同開発が始まりました。

— ネコ用検査キットはゼロからの開発ながら、それを作る下地はできあがっていたから、スムーズに開発が進んだのですね。

太野 しかも開発チーム内は皆さん、ネコが大好きだったんです。ネコが嫌な思いをしない検査方式を一緒に考えてくれました。尿検査では、スポイトで取ることなども検討しましたが、最終的にトイレで排尿後のペットシートから採取する方法を採用しました。検査されているのがネコにわからないようなものを作りたかったんです。

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「ネコのホンネ、わかってる?」

— 歯周病のリスクの話が出ました。イヌは歯磨きをさせる飼い主さんが増えていますが、ネコの場合も歯磨きが必要なのですか? 歯ブラシは使わずに食べ物にかけるだけ、舐めさせるだけのジェルやクリームは見かけます。

太野 ネコの歯磨きの大切さは、まだあまり認知されていないのです。これも私たちが発信していかなければいけないと感じています。人間は自分の歯磨きは一生懸命やりますよね。でもネコとなると、しっかり磨かなくてもクリームを舐めさせていればいいだろうと判断してしまいがちです。溜まっている歯石をしっかり除去しなければ、歯周病のリスクは軽減できないのです。

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ネコの腎臓を守るためにも、歯ブラシを使って歯磨きするのが望ましい。

その水道水、大丈夫?

— 飼い主にとっては手間のかかることも、ネコに必要なのであればきちんと向き合い、発信していく。その姿勢がnekozukiというブランドの信頼につながり、ファンを獲得しているのだと感じます。

太野 開発時は細かな改良を繰り返していくのですが、お客様はバージョンアップした商品をまた購入してくださったり、今はまだネコを飼っていないけれど将来を夢見て、モチベーションとして集めてくださったりしています。

— nekozukiの商品は、ネコが喜びそうなので、揃えたくなるのかもしれません。

太野 そうだとしたら、とてもうれしいですね。なおさら、中途半端なものを完成品にはできないので、時間はかかるかもしれないけれど、これからもしっかり開発していかなければと身が引き締まる思いです。

— 太野さんの活動で興味深いのは、「ねこずきラボ」を立ち上げて、専門家と協力しながらネコの生態研究をしているところです。その情報発信としてウェブサイトに「ねこずきの学校」という、愛猫について深く学べる学校もつくっています。

太野 各分野の専門家を招いて4〜5時間講演してもらう集中型の学校なんです。先日は腎臓病の講義をやっていただきました。これは動画にしてアップしています。

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nekozukiのウェブサイトにある「ねこずきの学校」でネコに関する知識を幅広く得ることができる。

太野 ネコが腎臓病になったらどう付き合っていけばいいのか、ネコに負担をかけずにできることはなにか知りたいと思い、講師を招きました。物を開発するだけじゃなく、そういった情報を発信していくのも重要だと思っているんです。

— 先ほどの水に関しても、何気なく自宅の水道水を与えている家庭がほとんどだと思います。

太野 これも東京大学で水の研究をしている堀まゆみさんを訪ね、講義をしていただきました。日本の水道水は軟水ですが、硬度は地域により異なります。山間部や雪が多く降る地域は比較的硬度が低く、関東の利根川を利用する東京、埼玉、千葉は硬度が高い傾向があるようです。特に千葉県が最も硬度が高い地域になります。

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3キロのネコで1日あたり190mlの水分が必要(環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」より)。硬度60mg/L以下の軟水で、pH値が中性に近く、ミネラルを過剰摂取しない水が安心。

太野 また、同じ市町村でも水の分配により硬度は異なるケースもあり、季節により変化することもあります。硬度が高い水をあげ続けるとネコに何らかの影響を与えてしまうことも考えられるので、定期的に水道水の水質をチェックしていると、より安心だと考えます。

手づくりごはん

— 太野さんはペット食育協会指導士、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格をもっていらっしゃいます。

太野 それもこれも、最初に飼った「なると」さんに教わったというか、何も知らずに申し訳ないことしていたという思いから始まっています。それが起業にもつながっています。

手づくりごはんは、保護猫「きなこ」さんを迎えてから興味を持ちました。原因不明の下痢が続いたことがきっかけです。そこで普段の生活と食生活を根本から見直してみることにしたのです。添加物が入った一般のペットフードから切り替えて、手づくりごはんを始めたところ、下痢は治まり、体調は改善していきました。最初は本などを参照してつくっていたのですが、手づくりごはんを実践していくなら本格的に学ぼうと、関連する資格を取得しました。

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自宅で手づくりごはんを用意していると、ネコは待ちきれない様子で寄ってくる。

太野 きなこさんは体が敏感で、化学物質やカビなどを体内からから排出しようと頑張っていたようです。ペットフードに含まれる添加物は避けた方がいいと、手づくりごはんを継続したのです。

— とはいえ、手づくりごはんはハードルが高いです。

太野 私にとっても昔は想像もしなかったことですが、やってみるとそれほど難しいことではないんです。nekozukiのサイトでレシピも公開しています。魚と水のみの無添加のウェットフードを販売しているので、それを活用して細かく刻んだ野菜とごはんなどを合わせれば、簡単にごはんがつくれます。

— 硬水のケースのように、人間にはよくてもネコには害を与えるものは生活環境にたくさん存在します。それを知らずに飼う人も少なくない。だからこそ太野さんは正しい情報の発信に力を注いでいるのですね。

太野 ペットショップで購入しても、何も教えてくれませんよね。例えばネコは脂質性の化学物質を解毒する酵素が弱いため、エッセンシャルオイルを空気中に散布すると中毒を起こすことがあります。何気なくしている日々の行動で、ネコの健康を害し、苦痛を与えているかもしれない。ウェブサイトなどを通じて正しい認識を伝えていくことは、状況改善の一歩になると思っています。

グッドデザイン賞の狙い

— さて、これまで7回グッドデザイン賞を受賞されています。度々エントリーされているということは、受賞による効果を感じていらっしゃるからでしょうか。

太野 商品の購入理由についてアンケートを取ると、グッドデザイン賞を受賞したからと答えるお客様もいますし、信頼を得るというか、何かものを選ぶときの後押しになっている手応えは感じます。また、開発チームの励みにもなっています。

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グッドデザイン賞を受賞した製品。ネコの爪研ぎ「GarigariBOARD」(2012年度)、キャットキャリーバッグ「ねこずきなトート」(2017年度)、ネコ用爪切り補助具マスク「もふもふマスク」(2020年度)。

太野 応募の際にエントリーシートに記入しますが、それがすべて商品開発する前段階で考え尽くした内容そのままというか、自分で考えた企画書を振り返る行為に重なるわけです。他社との違いはどこか、商品力はあるのか。企画開発の肝を問われているようで、エントリーすることで商品力をチェックすることができるのです。ですから、商品力を高めていくためにも、応募しているという側面もありますね。

ネコになりたかった。これは最大の推し活です

— これから、どのような商品を開発していくのでしょうか。

太野 特に介護に関するニーズが高まっているのを感じています。病気になってしまったネコをサポートする、早期発見できるようなキットをさらに開発していくなどさまざまありますが、一番は、ネコが元気でいてくれるように発信していくこと。元気で長生きしてほしいですから。あとは、ネコが快適に過ごせる、ネコと人が共生できるような空間デザインを考えたいですね。

— 建築設計は経験があるのですか?

太野 ありません。でもプロダクトデザインを学んでいなくても、プロダクトデザイナーとして商品開発を行ってきています。同じようにネコ目線で、理想的な空間を考えることはできるのではないかと思っています。これまでと同様に、企業や研究者の協力を仰ぎながら、それぞれの力を合わせて開発していけば不可能ではないと思うのです。

— 太野さんの活動から、「やろうと思えば、できないことはない」という背中を押されるようなメッセージを感じます。

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「健康」「食事」「日常生活」「介護」の4つのネコ事業を展開している太野さん。ネコと人が共生する社会を夢に描いている。

太野 とにかくネコが好きで、ネコの役に立ちたい一心で活動してきました。最大の推し活として商品を開発し、情報を発信しているだけなんです。私の背中を見せることが誰かの後押しになれるとは思いませんが、自分で変えたいと思っている何かがあるのなら、そこに対してひたすら、まっすぐに進めばいいのではないでしょうか。

好きなもの、推しているものがあれば、苦もなく動けるもの。私はずっとネコになりたかったんです。ネコになれないならば、せめて役に立ちたいという気持ちですね。

— 今では、世界の6億頭のネコを幸せにしたいと公言されています。

太野 課題はたくさんあります。岩手では2022年にペットショップが廃業して300を超える動物が店に取り残されるという問題が起きました。ネコ社員の「ひいらぎ」ちゃんはペットショップに取り残されたうちの1頭で保護猫出身です。

多くの人に厳しい状況を知ってもらうことは大切で、同時に、ペットショップ以外の選択肢ももってほしいと考えています。小さな一歩ですが、保護団体を支援するチャリティーや企画などを始めています。

— 「ネコ好き」というぶれない軸があるからこそ、柔軟な発想や大胆な行動力、諦めない気持ちが持続するのですね。太野さんの活動が、たくさんのネコの幸せにつながっていくことを期待しています。

グッドデザイン探訪では、あるテーマを切り口にインタビューや仕事紹介の記事をお届けしています。今回のテーマは「未来福祉」。福祉は「しあわせ」や「豊かさ」を意味します。未来の社会をよりよくしたい。そのために、どのような壁を乗り越えていったのか。先を見据えた未来へのデザインは、どこから始まったのかを語っていただきます。


GarigariBOARD

有限会社クロス・クローバー

伝統的な釘をつかわない「組み木」の技術を用い、使い捨てではない一生もののネコ用爪研ぎ(段ボール部は交換)として開発。爪研ぎは住居の一隅に置かれるが、それまで生活空間に馴染むものは少ない分野だったところ、丈夫でありながら美しい製品を提案し新機軸を示した。


受賞詳細
2012年度グッドデザイン賞 https://www.g-mark.org/gallery/winners/9d87fb20-803d-11ed-862b-0242ac130002

プロデューサー
有限会社クロス・クローバー 太野由佳子

ディレクター
有限会社クロス・クローバー 太野由佳子

デザイナー
有限会社クロス・クローバー 太野由佳子


ねこずきなトート

株式会社クロス・クローバー・ジャパン

「いかにもネコが入っている」という従来のペットキャリーバッグのイメージを一新、トートバッグのようなシンプルなデザインで、公共交通機関でも抵抗なく持ち歩くことができる。 ネコ目線、ヒト目線、双方の観点から開発を行い、ネコが居心地の良いキャリーバッグに仕上がっている点が評価された。


受賞詳細
2017年度グッドデザイン賞 https://www.g-mark.org/gallery/winners/9dd9cbed-803d-11ed-af7e-0242ac130002

プロデューサー
株式会社クロス・クローバー・ジャパン 太野由佳子

ディレクター
株式会社クロス・クローバー・ジャパン 太野由佳子

デザイナー
株式会社クロス・クローバー・ジャパン 太野由佳子/nekozuki ちゃっくん、ぽんちゃん+株式会社中川政七商店


もふもふマスク

株式会社クロス・クローバー・ジャパン

暴れて自宅では爪切りできないネコのための目隠し。興奮が抑えられ、おとなしくなる習性を活用した。マジックテープを採用し簡単でスムーズに着脱でき、肌に触れる部分は国産ガーゼにし、タグは肌に直接触れないよう表側に付けるなど、細部までネコへの負担を減らす工夫を施した。


受賞詳細
2020年度グッドデザイン賞 https://www.g-mark.org/gallery/winners/9e253444-803d-11ed-af7e-0242ac130002

プロデューサー
株式会社クロス・クローバー・ジャパン 太野由佳子

ディレクター
株式会社クロス・クローバー・ジャパン 太野由佳子

デザイナー
nekozuki ちゃっくん、ぽんちゃん/株式会社クロス・クローバー・ジャパン 太野由佳子


うちのねこといっしょ

株式会社クロス・クローバー・ジャパン

ネコの健康サポートのため、住み慣れたわが家で簡単に健康チェックができる検査キット。視覚的に理解しやすく、色を使った診断方法はわかりやすい。愛するペットの健康状態を定期的にチェックすることができ、獣医に行く無駄な費用や心配を減らすことができる点が評価を集めた。


受賞詳細
2023年度グッドデザイン賞 https://www.g-mark.org/gallery/winners/15926

プロデューサー
株式会社クロス・クローバー・ジャパン+セルスペクト株式会社+東北バイオエンジニアリング株式会社

ディレクター
株式会社クロス・クローバー・ジャパン+セルスペクト株式会社+東北バイオエンジニアリング株式会社

デザイナー
株式会社クロス・クローバー・ジャパン+セルスペクト株式会社+東北バイオエンジニアリング株式会社


石黒知子

エディター、ライター

『AXIS』編集部を経て、フリーランスとして活動。デザイン、生活文化を中心に執筆、編集、企画を行う。主な書籍編集にLIXIL BOOKLETシリーズ(LIXIL出版)、雑誌編集に『おいしさの科学』(NTS出版)などがある。


阿部和史

写真家

自然環境科学の専門学校を卒業後、代官山の広告スタジオに勤務。帰郷し印刷会社のカメラマンを経て2006年独立。料理、建築、ランドスケープ、人物などを中心に、広告全般ほか多様なジャンルで活動している。

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