今回のテーマ
2023年度審査委員アンケート
デザイン 三問三答
2024.05.01
2023年度のグッドデザイン賞の審査には、国内外のデザイナーや専門家など、各分野の第一線で活躍する約90名の審査委員が集まりました。そんな審査委員らに、改めて「デザイン」についての素朴な疑問を投げかけた、三問三答。第2回目である今回も、アートディレクター 服部 滋樹さんや、情報学研究者のドミニク・チェンさんなど多様なメンバーの回答を紹介します。
デザインに関わるようになったきっかけは?
「あらゆる人間が作り出すモノやコトは社会につながっている」と中学の美術の先生の一言より
最近、影響を受けたことは?
改めて任天堂。そのサスティナブルな経営戦略とオリジンの関係性について、改めて多くの気付きがある。
任天堂が推進するIP戦略は一過性の動きで終わることなく、継続性をもってパラレルに展開し続けることで、自らのブランド価値を捻じ曲げることなく、発展的により磨き上げていこうとする真っ当な企業姿勢が見える。世間の風潮に踊らされがちな現代社会において、企業価値を醸成し続けていく上で大切にしなければならないことは、揺るぎないアイデンティティに基づいているべきなのだと改めて考えさせられたとともに、任天堂のような潔さをもったブランドのデザインこそが今こそ求められているのであろう。
デザインに「できること」って何?
より良い未来をみんなで創ること
田子 學
アートディレクター/デザイナー | 株式会社エムテド 代表取締役
東芝にて家電、情報機器に携わり、家電ベンチャー、リアル・フリート(現アマダナ)にて創業期に参画し、デザインマネジメント責任者を務めた後、MTDO inc.を設立。広い産業分野において、イノベーションを目指す企業や組織に伴走しながら、コンセプトメイキングからプロダクトアウトまでをトータルにデザインする「デザインマネジメント」を得意としている。ブランディング、UX、プロダクトデザイン等、一気通貫した新しい価値創造を実践しているデザイナー。過去の国内外受賞歴多数。
デザインに関わるようになったきっかけは?
アルバイトで関わったアンティーク家具のリペアラーのお仕事です。美大生だった僕が18世紀の古い家具を修理させてもらった時、過去修復された人たちに並んでサインをした事からデザインってすばらしい!となった。
最近、影響を受けたことは?
子どもたちの「発見!」って言葉。根源的だなーと。
デザインに「できること」って何?
愛とムチ。 言いかえれば、包容力と触媒として関係性を持てること。
服部 滋樹
デザイナー/クリエイティブディレクター | graf 代表/京都芸術大学 情報デザイン学科 教授
1970年大阪生まれ。1997年より、スタートアップした異業種が集まるコレクティブgraf 代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。建築、インテリア、プロダクトに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛ける。デザインリサーチからコンセプトを抽出し、地域や社会基盤もその領域として捉え、仕組みの再構成と豊かな関係性を生み出すコミュニケーションを物づくりからデザインする。プロジェクトからプログラムへ、ムーブメントからカルチャーへとなるデザインを目指す。
デザインに関わるようになったきっかけは?
子供の頃に、使う言語の違い(日本語とフランス語)によって異なる感覚世界が立ち現れることに気づいた時
最近、影響を受けたことは?
発酵食作り、弱いロボット、能楽、中動態
デザインに「できること」って何?
「わかりあえなさ」や「わからなさ」に近づいて行けること
ドミニク・チェン
情報学研究者 | 早稲田大学 文学学術院 教授
1981年生まれ。博士(学際情報学)。NTT InterCommunication Center[ICC]研究員, 株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現職。テクノロジーと人間、自然存在の関係性、デジタル・ウェルビーイングを研究している。著書に『コモンズとしての日本近代文学』(イースト・プレス)『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために』(新潮社)など多数。監訳書に『ウェルビーイングの設計論―人がよりよく生きるための情報技術』、監修書に『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために―その思想、実践、技術』(共にBNN新社)など。
デザインに関わるようになったきっかけは?
IDÉE SHOPで働き始めたことが、デザインに関わるようになったきっかけです。
最近、影響を受けたことは?
昨年、ドイツの国際的なデザイン賞「Red Dot Design Award」のブランド&コミュニケーションデザイン部門で、一昨年に手がけたプロジェクトがグランプリを受賞し、デザイン賞に対するスタンスの違いを直接学べたことは大きかったです。
デザインに「できること」って何?
デザインが社会を変えたり、社会課題を解決することに対しては、正直、半信半疑ではありますが、少なくともより良い回答を導く、ひとつの指針となることは可能だと思っています。
山田 遊
バイヤー | 株式会社メソッド 代表取締役
東京都出身。 南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして店舗の立ち上げをはじめ、国内外のモノにまつわる様々な仕事に携わる。現在、株式会社メソッド代表取締役、 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科客員教授、東京ビジネスデザインアワード審査委員長。2013年「別冊Discover Japan 暮らしの専門店」が、エイ出版社より発売。2014年「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」が、誠文堂新光社より発売。
デザインに関わるようになったきっかけは?
高校のころ一人旅をしていたとき、行く先々のまちで、風土・文化・建物・人々の営みが重なりあって現れる風景に魅了されたから。
最近、影響を受けたことは?
子どもが生まれたこと。彼らが目にし、触り、喜びとともに世界を捉えていくさまに感動するし、世界はこんなに喜びに溢れているのだと教えられる。
デザインに「できること」って何?
異なる視点をもたらすこと、ともに考える手がかりをつくること
内田 友紀
都市デザイナー / リサーチャー | 株式会社リ・パブリック ディレクター、YET 代表
早稲田大学建築学科卒業。メディア企業を経て、イタリア・フェラーラ大学院にてSustainable City Designを修め、ヨーロッパ・南米・東南アジアなどで地域計画プロジェクトに参画。現在は、ビジョン構築、組織開発、コミュニティデザイン等を通じて、市民・企業・行政府・大学らとともに持続可能な地域社会に向けたエコシステムの構築に携わる。A New Scaleでは、身体性、都市デザイン、アートを切り口とした都市研究活動を展開。書籍「あしたのしごと アジアの実践者と考える、オルタナティブな未来」(コクヨ株式会社)を共同企画・編集。内閣府地域活性化伝道師。
Journal編集部
編集・執筆
ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チーム。デザインの新しい可能性を探るため、グッドデザイン賞の運営事務局と、外部メンバーが共同で企画・運営をおこなっている。