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「デザインって何だろう?」 小さなハテナから ひろがる世界を覗いてみよう

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今回のテーマ

アイデアのハテナ

QRコードは、なぜこの模様?

2025.06.12

みんなが知っている“あのデザイン”の背景にある、?(ハテナ)を解き明かします。今回は、日常のあらゆる場面で目にする「QRコード」のデザインについて。1994年に発表されて以来、日本国内はもちろん、世界中で使われている正方形の白黒模様は、どのようにして生まれたのか、開発秘話をうかがいました。


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*グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞時(2021年)の画像です。

1980年代まで、製造業や物流業、小売業などの現場で自動認識のコードとしてもっとも幅広く活用されていたのは「バーコード」でした。しかしバーコードには、英数字で最大20文字程度の情報しか格納できないというデータ容量の制約がありました。

当時の生産現場では、この容量の少なさを補うため、伝票に複数のバーコードを並べるなどして対応していました。しかし、それでは作業者が膨大な読み取り作業を行う必要があります。

折しもインターネット時代が本格的に到来しつつあり、二次元コード開発が本格化する中で、こうした課題を解決するために、日本発の新たな2次元コードの開発をスタート。開発チームの使命は「より多くの情報を、コンパクトに、そして素早く読み取れる」コードを作ることでした。

「QRコード」という名前は、“クイック・レスポンス(Quick Response)”に由来します。高速読み取りへの強いこだわりが、その名にも込められています。今回は、QRコード誕生の背景について、株式会社デンソーウェーブ(注)にお話をうかがいました。

*「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

QRコードは、なぜこの模様?

QRコード開発の際、当時、先行していた2次元コードの特長を合わせ持つ、「早く読み取れ、大容量で、汚れやゆがみに強い」、オールマイティーなコードとする方針を立てました。

その実現のためには、さまざまな印刷物の中にあるコードを、読み取り機がすぐに見つけられる必要がありました。そこで考案されたのが、コードの3つの隅に配置された「切り出しシンボル」です。

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開発チームはさまざまな印刷物を調査し、文字や図形の中で出現する度合いが少ない「1:1:3:1:1」という比率に着目。この比率を取り入れた「切り出しシンボル」を格納データの容量にも配慮して3隅に配置、その結果、他の2次元コードにはないユニークなデザインとなりました。

デザインが長く続いている秘訣は?​​

QRコードは、利用する方々とその場面を想定して、「いかに使っていただきやすいか、お役に立てるか」というユーザー視点から逆算して開発されました。

その結果のデザインを評価していただいていると受け止めていますので、未来のデザイナーへのアドバイスにはなりませんが、ユーザー視点であり性能を愚直に追求することで、そのデザインも洗練され、また長く受け入れていただけるのではないかと考えます。

QRコードがこれほど広まったもうひとつの理由として、「誰でも使えるようにしたこと」があります。デンソーウェーブは取得したコードに関する特許を無償で利用できるようにするとともに、さまざまな団体で規格化することで、誰もが安心して使えるようにしました。そこには、「たくさんの人に使ってほしい」という開発の思いが込められています。

その結果、QRコードは“誰もが使えるコード”として名刺や電子チケット、さまざまな発券システムなど、日常のあらゆる場面で活用され、今や人々の生活に欠かせない存在となっています。「アイデアのハテナ」では、こうした広く親しまれているデザインの背景にあるストーリーを、これからもお届けしていきます。

ご協力・出典:株式会社デンソーウェーブ QRコード開発: https://www.denso-wave.com/ja/technology/vol1.html コードドットコム QRコード 道のみ: https://www.qrcode.com/history/

(注)QRコードは、デンソーウェーブの自動認識事業が株式会社デンソー(当時の社名は日本電装株式会社)の応用機器部門であった1994年に開発され、2001年に事業および権利をデンソーウェーブが継承し事業展開している。

Journal編集部

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チーム。デザインの新しい可能性を探るため、グッドデザイン賞の運営事務局と、外部メンバーが共同で企画・運営をおこなっている。

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