今回のテーマ
アイデアのハテナ
「写ルンです」は、なぜ写る?
2025.01.17
みんなが知っている“あのデザイン”の背景にある、?(ハテナ)を解き明かします。今回は、富士フイルム株式会社の「写ルンです」について。写真の常識を覆した画期的な製品のはじまりを聞きました。
「フィルムにレンズをつける」という、逆転の発想から生まれた「写ルンです」。1986年、まだカメラや写真が特別なものだった時代に誕生し、その斬新なデザインと手軽さは、写真を「いつでも、どこでも、誰でも」撮れるものへと変え、写真文化に革命をもたらしました。
富士フイルムは1934年、写真感光材料メーカーとして誕生。カラー写真の基礎を築くとともに、フィルムやビデオテープ、世界初のフルデジタルカメラを開発し、写真・カメラ業界を牽引。また、普通紙複写機や国産初の電子計算機、医療分野の製品まで、多岐にわたる製品を展開してきました。
そんな革新の歴史のなかで生まれた「写ルンです」。その「フィルムにレンズをつける」という大胆なアイデアは、どのようにして生まれ、写真を“日常”を写すものに変えることができたのか?今回は「写ルンです」の誕生の背景について、富士フイルム株式会社 デザインセンターさんに尋ねました。
「写ルンです」は、なぜ写る?
1980年代、フィルムカメラが普及してきたものの、まだまだカメラの値段は高かった時代。さらにフィルムの取扱はアマチュアには難しい。そんな中で「誰でも簡単に撮れるカメラを作りたい」という想いは富士フイルムの中に長年あった。
この頃、当社はフィルムの高感度化・高画質化の研究開発を進め、天候等に左右されないフィルムの商品化に成功。そこで、カメラを安くするのではなく「高性能なフィルムにレンズを付ければ夢に描いた商品が作れるのではないか」という当社ならではの発想に至った。
社内会議での「本当に写るんだろうか?」という質問に対し、「写るんです!」と答えた社員の熱意がそのまま製品名になっている。
デザインが長く続いている秘訣は?
「フィルムにレンズを付ける」という逆転の発想のもと、低コストを実現しつつも、お客さまの大切な瞬間を逃さないために、極力シンプルで壊れにくいデザインで初号機は誕生。
さらに現像するためにお客さまが写真店へ持って行き、店員さんが素早くフィルムを抜き出し、さらにボディはリサイクルに回す、という「写ルンです」のライフサイクル全体が早い段階から設計できていたことが、長く変わらないデザインに繋がっているのではないでしょうか。
デザインの背景を知ることで、時代を超えても変わらず新鮮に愛される理由を改めて感じられるのではないでしょうか。「アイデアのハテナ」では、デザインに秘められた発想と工夫をこれからも探求していきます。
ご協力・出典:富士フイルム株式会社 https://www.fujifilm.com/jp/ja 写ルンです シンプルエース https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/films/utsurundesu-simpleace 90周年特設ページ(歴史)https://holdings.fujifilm.com/special/90th/ja/history/
Journal編集部
編集・執筆
ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チーム。デザインの新しい可能性を探るため、グッドデザイン賞の運営事務局と、外部メンバーが共同で企画・運営をおこなっている。
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