「デザインって何だろう?」 小さなハテナから ひろがる世界を覗いてみよう
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素朴なギモンから「デザイン」を 知って、感じて、近づくための実験室

今回のテーマ
アイデアのハテナ
食卓塩は、なぜ持ちやすい?
2025.03.14
みんなが知っている“あのデザイン”の背景にある、?(ハテナ)を解き明かします。今回は、赤いキャップでお馴染みの「食卓塩 100g」のデザインについて。1952年の発売当初から、使う人に寄り添い続けるデザインについて聞きました。
わたしたちの食卓や台所に昔からあり続ける「食卓塩 100g」。赤いキャップと手に馴染む大きさ・形が特徴的なこのデザインが最初に誕生したのは1952年ですが、その歴史はさらに遡ります。
戦前の大正時代、日本の家庭に洋風の食文化が広まり始めたなかで、「使いやすい塩」として「食卓塩」が誕生しました。日本の塩田でつくるのではなく、海外から輸入した天日塩などを原材料につくられた、当時としては珍しいサラサラした塩でした。
戦後、製造が再開されると、1952年にビン入りの小型サイズ「食卓塩 100g」が登場。その後、1969年にリニューアルが行われ、現在まで受け継がれるデザインが完成しました。
このリニューアルは、「食生活を楽しくするデザイン」というコンセプトのもと、使う人の暮らしに寄り添う形で行われました。大正時代に始まり、時代の変化とともに進化を重ねながらも、変わらず食卓の一員として愛され続ける安心感のあるデザイン。そのデザインはどのように考えられているのか、塩事業センターさんに尋ねました。
食卓塩 100gの瓶は、なぜあのカタチに?
食卓塩 100gは、食卓やキッチンに安定して置くことができ、また、使用する時に瓶を逆さにしても手からすべり落ちないようにするため、1952年の発売時から末広がりの形状にしています。
1969年のリニューアルでは、瓶に適度な厚みと肩部に丸みをつけることによって、より手にフィットして持ちやすくなりました。そして瓶内の塩が肩部に付着することなくスムーズに振りだせるようもなりました。
つまり、使用上の安全性や利便性など使う人の満足を追求した結果のカタチです。
デザインが長く続いている秘訣は?
食卓塩 100gのデザインは、使用する時の安全性、視認性、利便性の向上を追求したものであり、その結果うまれた安定した形状とシンプルなデザインが皆さまに受け入れられたのではないかと考えます。
1952年の発売以来、一度のリニューアルを経ていますが、赤いキャップでお馴染みの「食卓塩」として、長年にわたり多くの皆さまにご愛用いただいている理由は、その実用性を追求したシンプルなデザインにあるといえるかもしれません。
デザインがどのように考えられているか知ることで、日常の何気ないアイテムがより特別に感じられるのではないでしょうか。「アイデアのハテナ」では、長く親しまれるデザインの秘訣を解き明かしていきます。
ご協力・出典:公益財団法人塩事業センター https://www.shiojigyo.com/ 食卓塩シリーズ・ブランドヒストリー https://www.shiojigyo.com/product/upload/brandhistory_tablesalt.pdf
Journal編集部
編集・執筆
ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チーム。デザインの新しい可能性を探るため、グッドデザイン賞の運営事務局と、外部メンバーが共同で企画・運営をおこなっている。
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