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「よいデザイン」を探求する プロセスを届ける

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能登のあたらしい未来をつくるための“知”、そして“デザイン”

2024.06.21

震災発生から半年、今だからこそ創り出せる未来がある。そんな気づきが詰まった展覧会「NOTO NEXT -みんなのアイデア-」がGOOD DESIGN Marunouchiにて開催中。被災者、支援者だけでなく、能登の魅力を知ったすべての人から集まる“知”によって、新しい未来をデザインする試みをご紹介します。


デザインと社会をつなぐコミュニケーション・スペースであるGOOD DESIGN Marunouchiでは、6月26日(水)まで「NOTO NEXT -みんなのアイデア-」展を開催しています。 本展は、能登半島地震を悲劇では終わらせず、年代や職業、また地域性などあらゆる境界線を飛び越え、持続可能な未来を創り出すための展覧会です。

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「他人事」を「自分事」へ

2024年元旦に発生した能登半島地震から半年。石川県は南北に長く、地域によって被害や復興の状況もさまざまではありますが、今でも地震の深い爪痕が残ったままとなっています。

時間とともに被災地への関心が薄れていってしまう現実もありますが、この展覧会では、震災を「他人事」から「自分事」へと変えるきっかけとなる能登の「心」に触れることができます。

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能登の「心」とは、例えば代表的な伝統工芸である「輪島塗」。名前を聞いたことがある方は多いと思いますが、どんな工芸品なのか、どんな歴史をもつのか、どんな人がどんな想いで伝統を受け継いでいるのか。

今回の展示では、江戸時代から現代のものまで、さまざまな技が施された貴重なコレクションを見ることができます。

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また会期中には毎週末、多様なテーマのトークイベントが開催されており、輪島の漆器業界を代表する企業のひとつである高洲堂の大向正浩さんによるギャラリートークも行われました。

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大の工芸好きと紹介があった高洲堂 代表の大向さん。トークのはじめには「こんな機会だからこそ伝えられることがある」と輪島の知られざる魅力を教えてくれました。

受け継がれてきた漆の技術に加え、繊細な蒔絵など熟練と才能、そして集中力を要する美しい職人技について、歴史とともに解説。輪島塗は美術品としてだけでなく日用品としても使えるとのことで、「よい漆をたくさん使えば使うほど、めちゃくちゃよい艶が出る。そうするとこれ以上ない愛情が湧いてくる。よい味わいの器へと育てるように使ってもらえればありがたい」と語られました。

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トークイベントはそのほかにも、行政の方やクリエイター、学生などさまざまなスピーカーを招き、復興のデザインや、持続可能な観光などのテーマで行われています。

仮設工房発のプロジェクト

今回の展示は、震災後に職人の手を止めないためのプロジェクトから始まりました。職人とは、アスリートやピアニストのように、1日でも指を動かさないと感覚が鈍るといわれており、住居や工房を失ってしまったなかでも「手が忘れんうちに仕事がしたい」という強い想いがありました。

職人たちの想いと伝統工芸の未来のために、今回の展示ディレクターであるプロダクトデザイナーの鈴木啓太さんを中心にプロジェクトが発足。同じく今回の地震で破損した石川県の伝統工芸である「九谷焼」を、輪島塗の職人が金継ぎと蒔絵の技法を用いてつなげるコラボレーションが生まれました。

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九谷焼の産地として知られる石川県能美市に職人のための仮設工房が設立。写真は2024年2月の様子。

本展にも、割れた九谷焼の断面に金継ぎと蒔絵が施され、優雅な“作品”へと生まれ変わった壺や、お皿などが展示されています。

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一人ひとりの声で未来を創る

被災者、支援者、そして職人、作家、デザイナー、さまざまな立場の人々が、ひとりの当事者として能登への想いや展望を語り、未来を考える上で出会った気づきをシェアする展覧会。

会場には、来場者もそのひとりとして、思いや疑問を自由に記入し貼ることのできる付箋とボードが用意されています。またWebサイト上でもオンラインホワイトボードのMiroを活用して自分の考えを発信することが可能です。NOTO NEXT -みんなのアイデア-展のMiroボートはこちら

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Miroボード内に付箋を貼り誰でもコメントをすることができる。

本展についてプロジェクトの発起人でもある鈴木啓太さんに伺ったところ、「皆さんが能登半島のために何かしたいと思っても、情報が不足していて何をすれば良いのか戸惑うという声をよく聞きます。この展示「NOTO NEXT」は、皆さんの気持ちに応え、さまざまなアイデアを生み出す場を提供するだけでなく、さまざまなアイデアに触れることで、自分にしっくりくることや、やってみたいことを見つけるきっかけになります。

会場やオンラインで、皆さんのアイデアを反映できる機会を設けています。ぜひ参加して、収録されたトークもぜひご覧ください。能登のことをみんなで一緒に考えていきましょう」とのメッセージをいただきました

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本展ディレクター:鈴木啓太さん(株式会社プロダクトデザインセンター)

能登の文化、そして震災後の現在について知った一人ひとりが声を発していく。その声が集まり、さまざまな視点がベースとなった集合知からは新しい未来が見えてくるのではないでしょうか。

展覧会名:NOTO NEXT -みんなのアイデア- 会期:2024年6月6日(木)~26日(水) 11:00~19:00 会場:GOOD DESIGN Marunouchi (東京都千代田区丸の内3-4-1新国際ビル1F) 入場料:無料 公式HP:https://www.notonext.jp/

ポップアップ・ショップも同時開催!

本展の開催期間中、GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA(KITTE 丸の内 3階)でポップアップ・ ショップを同時開催しています。輪島塗の作品をはじめ、現在進行中のプロジェクトで制作された漆芸や金継ぎの作品など、多種多様なアイテムを展開。実際に手にとり、日常生活に取り入れることで工芸の素晴らしさをぜひ体験してみてください。

ショップ名:NOTO NEXT STORE (日本語表記 「ノト・ネクスト ストア」) 期間:2024年6月5日(水)~26日(水) 11:00~20:00 場所:GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA (東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE丸の内 3階) 内 公式HP:https://gds.tokyo

大橋真紀

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。