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グッドデザイン賞で見つける 今、デザインが向き合うべき課題とは

審査プロセスをとおして 社会におけるこれからのデザインを描く、 グッドデザイン賞の取り組み「フォーカス・イシュー」

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2023年度フォーカス・イシュー

Focused Issues Researcher's Eye

その社会課題を解決してはいけない – 中村 寛

2024.07.08

審査委員ではない外部有識者の立場から、すべての審査対象を見つめ、“うねり”を探ってきたフォーカス・イシュー・リサーチャー。3人それぞれの専門性や切り口から、審査プロセスに伴走する中で見えてきた気づきや視点について書いてもらった。 今回は、デザイン人類学者の中村寛が、解決すべき「社会課題」に直面したときに求められる「勇気」について考察する。 本記事は、2023年度フォーカス・イシューレポートにも収録されています。

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その社会課題を解決してはいけない – 中村 寛


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中村 寛

人類学者 | 多摩美術大学教授/アトリエ・アンソロポロジー代表/KESIKI Inc.デザイン人類学者

文化人類学者。デザイン人類学者。「周縁」における暴力、社会的痛苦、反暴力の文化表現、脱暴力のソーシャル・デザインなどのテーマに取り組む一方、様々な企業やデザイナーと社会実装を行う。著書に『アメリカの〈周縁〉をあるく――旅する人類学』(平凡社、2021)、『残響のハーレム――ストリートに生きるムスリムたちの声』(共和国、2015)。編著に『芸術の授業――Behind Creativity』(弘文堂、2016 年)。訳書に『アップタウン・キッズ――ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化』(テリー・ウィリアムズ&ウィリアム・コーンブルム著、大月書店、2010)―――


(*1) ヴァルター・ベンヤミン(高原宏平・野村修編集)『ヴァルター・ベンヤミン著作集1ーー暴力批判論』晶文社, 1969. ジャック・デリダ(堅田研一訳)『法の力』法政大学出版局, 2011. (*2) Wexler, David B. “Therapeutic Jurisprudexnce and Its Application to Criminal Justice Research and Development.” Arizona Legal Studies (Discussion Paper), vol. No. 10-20, Nov. 2010, https://papers.ssrn.com/abstract=1628804. (*3) 修復的司法(RJ)と治癒的法学(TJ)とは、共通点を持ちつつも、異なる出自のものとして定義されている。RJに関しては、たとえば以下の文献を参照。ハワード・ゼア(西村春夫・細井洋子・高橋則夫訳)『修復的司法とは何か――応報から関係修復へ』新泉社, 2003. ---(森田ゆり訳)『責任と癒し――修復的正義の実践ガイド』築地書館, 2008. ジョン・ブレイスウェイト(細井洋子・染田惠・前原 宏一・鴨志田康弘訳)『修復的司法の世界』成文堂, 2008. 高橋則夫『修復的司法の探求』成文堂, 2003. 山下英三郎『修復的アプローチとソーシャルワーク――調和的な関係構築への手がかり』明石書店, 2012. TJに関しては以下を参照。Braithwaite, J. “Restorative Justice and Therapeutic Jurisprudence.” CRIMINAL LAW BULLETIN-BOSTON-, 2002, https://heinonline.org/hol-cgi-bin/get_pdf.cgi?handle=hein.journals/cmlwbl38§ion=20. Perlin, Michael L. “What Is Therapeutic Jurisprudence.” NYL Sch. J. Hum. Rts., vol. 10, 1992, p. 623. Wexler, David. “Therapeutic Jurisprudence:An Overview.” TM Cooley L. Rev., vol. 17, 2000, p. 125. Wexler, David B., and Bruce J. Winick. Law in a Therapeutic Key:Developments in Therapeutic Jurisprudence. Carolina Academic Press, 1996. 治療的司法研究会編著、指宿信監修. 治療的司法の実践――更生を見据えた刑事弁護のために. 第一法規, 2018. 治療回復共同体に関しては、坂上香『プリズン・サークル』岩波書店, 2022.『ライファーズーー罪に向きあう』みすず書房, 2012. (*4) ワンネス財団の伊藤宏基氏、三宅隆之氏、宮澤大樹氏へのインタビューより(2023年12月15日)。 (*5) そもそも法を、デザインの一種と考えることもできる。水野祐『法のデザイン』フィルムアート社, 2017. (*6) ダイハツ工業株式会社、岡本仁也氏へのインタビューより。なお、ゴイッショ開発の背景については、以下のサイトなどでも読むことができる。 https://caresul-kaigo.jp/column/articles/31314/(最終閲覧日:2024年1月6日) https://www.minnanokaigo.com/news/visionary/no69/(最終閲覧日:2024年1月6日) https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00003/011100262/(最終閲覧日:2024年1月6日) (*7) 各種傾聴のプログラムやオープンダイアローグ、エンカウンターグループなど、聴くことや対話の実践に触れた書籍は多数存在する。だがここでは、理論的な基盤として以下の文献を参照。アルベルト・メルッチ(新原道信・長谷川啓介・鈴木鉄忠訳)『プレイング・セルフ――惑星社会における人間と意味』ハーベスト社, 2008. 新原道信『境界領域への旅ーー岬からの社会学的探求』大月書店, 2007. 鷲田清一『「聴く」ことの力ーー臨床哲学試論』阪急コミュニケーションズ, 1999. (*8) “よりゆっくり、より深く、よりやわらかく”というものごとへの「かまえ」は、平和・環境活動を展開したアレクサンダー・ランガー(Alexander Langer)によるもので、のちに社会学のアルベルト・メルレルや新原道信に引き継がれたものである。たとえば、以下の論考を参照。https://sociology.r.chuo-u.ac.jp/blog/detail/270 (*9) Gong Jow-Jiun氏へのインタビューより(2023年12月7日)。下記のサイトも参照。 https://www.g-mark.org/en/gallery/winners/19930(最終閲覧日:2024年1月6日) (*10) メッシュワークは、ティム・インゴルドによって、ネットワークとの対比で打ち出された概念。万物議会は、ブリュノ・ラトゥールによるもの。ティム・インゴルド(工藤晋訳)『ラインズ――線の文化史』左右社, 2014. ブルーノ・ラトゥール(川村久美子訳)『 虚構の「近代」――科学人類学は警告する』新評論, 2008. (*11) 金澤晋二郎氏および金澤聡子氏へのインタビューより(2023年12月22日)。


今井駿介

フォトグラファー

1993年、新潟県南魚沼市生まれ。(株)アマナを経て独立。


小池真幸

エディター

編集者。複数媒体にて、主に研究者やクリエイターらと協働しながら企画・編集。