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グッドデザイン賞の “今”を届ける

グッドデザイン賞の応募に込めた想い、 グッドデザイン賞の審査に込める想い、 さまざまな想いが交差し、連鎖する

「よいデザイン」を探求する プロセスを届ける

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「目の前にある課題のために一歩を踏み出したこと」が応募対象。グッドデザイン賞の「取り組み・活動」分野とは

2023.05.12

昨年度の「まほうのだがしやチロル堂」、2021年度の「遠隔就労・来店が可能な分身ロボットカフェ」と、2年連続でグッドデザイン大賞を輩出している「取り組み・活動」の分野。そんな注目度の高いカテゴリーでありながら、実は初めて応募する企業・団体が多く、審査に関する質問も数多く寄せられている。そこで、今回はその応募概要や審査ポイントを解説する。


2023年度のグッドデザイン賞は、全19の応募カテゴリーに分けられています。応募の際には「どの領域で審査されたいか」を考え、応募カテゴリーを選択することが必要です。

今回は、そのなかのカテゴリー18「地域の取り組み・活動」とカテゴリー19「一般向けの取り組み・活動」の2つからなる「取り組み・活動」のデザインについて紹介していきます。

「取り組み・活動」のデザインとは

「取り組み・活動」の具体例は、応募サイトに掲載されています。

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記載があるもの以外でも、大きな課題解決から、自分の身の回りの小さな悩みの解決、またそれをサポートするひとなど、私たちの生活に密着した多種多様な取り組み・活動が審査される分野です。つまり「目の前にある課題のために一歩を踏み出したこと」すべてが応募対象であるといえます。

しかし身近に感じやすい分野だからこそ、自分たちの取り組み・活動のどんなところが「デザイン」なのか、どこが「デザイン」として評価されるのか、わからない方も多いのではないでしょうか。

何を「デザイン」とするのか

仕組みのデザインやコミュニケーションデザインと呼ばれることも多い「取り組み・活動」の分野が、何をデザインとし、何を審査しているのか。そのヒントとなるのは、昨年「地域の取り組み・活動」のカテゴリーで活用されていた5つの審査の指針です。

・本質的な社会課題に着目できているか ・内容や仕組みにオリジナリティがあるか ・表現や成果物(アウトプット)が美しいか ・継続性があり、実績があるか ・社会全体が良いデザインだと思える共感力があるか

これは、グッドデザイン賞の全体の指針である「審査の視点」に加え、カテゴリー独自で作成されたものです。今回は、このなかでも「成果物の美しさ」と「継続性」について注目してみます。

まず、「美しさ」とは、キレイに装飾がされていることではないといいます。取り組み内容と表象が一致していることが、美しさのひとつの基準となります。

例えば、取り組みに参加してもらいたいユーザーに伝わりづらい見た目や、参加を促せない見た目となってしまっていたり、また内容よりも華美な装飾の方に目がいってしまうことも、内容と表象の不一致といえるでしょう。

「誰のための取り組みなのか」が明確であり、届けたいひとに届けるために最適な表象であることが「美しいデザイン」のために必要なことと考えられます。

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「取り組み・活動」の分野は二次審査でも資料のみの展示となる。そのため、どのようにユーザーに伝えているかなど文章と写真・動画だけで表現する必要がある。

自分たちの取り組みの“フェーズ”を知る

次に「継続性」について。取り組み・活動には「フェーズ」があることが特徴のひとつです。例えばプロダクトデザインの場合、ユーザーが使用できる状態が完成ですが、取り組みや活動には「完成」がありません。そのためこれまでの受賞作のなかには、開始数ヶ月のプロジェクトもあれば、長年活動しているプロジェクトもあります。

つまり「継続性」とは、単に継続年数が長いものだけを評価することではないといえます。ではどんなポイントが評価されるのか。まず、期間を軸にプロジェクトのフェーズを3つに分けてみます。

①新しくはじまった取り組み・活動 ②継続的に動きはじめている取り組み・活動 ③すでに長い期間継続している取り組み・活動

①〜③のそれぞれのフェーズで、やるべきことも、デザインするものも変化するのではないでしょうか。これらのプロジェクトの変化によって審査のポイントがどのように変わるのか、「取り組み・活動」分野の審査委員である飯石藍さんに伺いました。

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都市デザイナーの飯石藍さん。昨年度の審査の様子。

①のフェーズの場合:この段階では、プロジェクトを通じて解決しようとしている問題について、関わる人たちに気づきを促し、意識を変えていくことが重要です。どのような課題を解決しようと思ってプロジェクトが立ち上がったのか。その中でどのようなしくみを作り、アプローチをしているのか、そして関与する人たちがどのように変わりはじめているのか、今後の可能性を含めて審査しています。   ②のフェーズの場合:この段階では、課題解決に向けた具体的な活動が、どれだけの効果を生み出しているかを見ています。①と同様にどのようなしくみを作っているかはもちろんのこと、プロジェクトが実際にどんな課題解決に貢献しているか、関与する人の行動変容を促しているかを分かりやすく書いていただきたいです。(定量的、定性的の両側面から効果を記述いただきたいです)   ③のフェーズの場合:この段階では、すでに実績もあり、活動自体が周知されている状態だと思います。その場合、これまでどのような活動をしてきたかに加え、今後も継続してプロジェクトが回っていくためのしくみをどのように実装しているか、今後の展望もあわせて示していただきたいです。

はじまったばかりでも、継続するための計画がどれだけ具体的に立てられているか、またすでに運営しているプロジェクトであれば、効果はどのように現れているかなど、フェーズによって審査の視点が異なることがわかります。まずは自分たちの取り組み・活動が今、どのフェーズにいるのか、何がアピールポイントなのかを客観的に知ることが重要といえるのではないでしょうか。

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多様な専門性をもつ審査委員らが、議論を交わしながら審査は進められる。実際に、審査委員が応募された取り組みの場所に訪れ、体験した上で審査することも。

「個別相談会」でできること

取り組み・活動を客観的に知るためにおすすめなのは、グッドデザイン賞事務局が応募期間中に開催している「個別相談会」の活用です。

個別相談会では、応募にまつわる事務的な質問はもちろんですが、プロジェクトの整理をする機会としても有効です。まずは、今回紹介した5つの指針に対する自分たちなりのアンサーを書き、どんなところが伝わりにくいか、どんなところをもっと知りたいかなどを個別相談会で聞いてみるのもよいかもしれません。

自分たちの取り組み・活動の現状を“棚卸し”をすることのメリットは、グッドデザイン賞の応募に限りません。今後もより多くの人に届け、共感してもらい、少しずつでも社会を変えていく一歩として、グッドデザイン賞を活用してみてはいかがでしょうか。

個別相談会 日程 5月19日(金)まで 各日時間予約制・先着順 申込 2023年度グッドデザイン賞個別相談会予約申込フォームより https://g-mark.io/session-booking/jp/sessions

大橋真紀

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。