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グッドデザイン賞の “今”を届ける

グッドデザイン賞の応募に込めた想い、 グッドデザイン賞の審査に込める想い、 さまざまな想いが交差し、連鎖する

「よいデザイン」を探求する プロセスを届ける

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2023年度 グッドデザイン賞 スタート! 応募からはじまる新しい可能性とは

2023.04.28

4月4日からはじまった2023年度のグッドデザイン賞。キックオフイベントでは、新審査委員長であるパノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰の齋藤 精一さんが、今年度のテーマ「アウトカムのあるデザイン」について語った。「見た目がよいからグッドデザインだね、ではない」の言葉からみえるグッドデザイン賞の本当の価値を探る。


「GOOD DESIGN REPORT」は、Journal編集部がグッドデザイン賞のイベントや審査過程の取材などをとおして、グッドデザイン賞の“今”をお届けする連載です!

第1回は、応募開始日に開催されたキックオフイベントのレポートとともに、5月24日(水)13:00まで応募受付中の2023年度グッドデザイン賞の概要や、テーマについて紹介します。

キックオフイベントのアーカイブ動画はこちら

トークには、新審査委員長である齋藤精一さん、副委員長の倉本仁さんと永山祐子さんが参加し、今年度の審査に対する想いや、期待すること、また改めてグッドデザイン賞が考える「デザイン」について語り合う場面も見られました。

グッドデザイン賞が考える「デザイン」

1957年から60年以上の歴史をもつグッドデザイン賞は、工業製品の認証制度からはじまり、今では、文房具や家電などの日用品から、産業・医療機器、また都市計画まで応募対象は幅広い分野に広がっています。

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そのなかでも今年は、ここ最近「モノのデザイン」と「コトのデザイン」が2つに分けて見られていることに注目。トークのなかでは齋藤さんが「アウトプットがモノである場合には、そのうしろにあるストーリーであったり、アウトプットがコトである場合には、インターフェイスやWebサイトであったり、モノとコトは別々に存在しないのではないか」と疑問を投げかけていたように、モノとコトを分けることは難しいのかもしれません。

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応募の際に指定するユニットもあくまでひとつの「視点」であり、審査過程では、モノもコトも分け隔てなく、あらゆる角度から深く議論がされます。アウトプットのかたちにとらわれず、理想や目的を果たすために築いたものごとすべてを「デザイン」としているのがグッドデザイン賞です。

今年度のテーマ「アウトカムがあるデザイン」とは

デザインの定義の広がり、また広げていくことの意義は、今年度のテーマにもつながっています。

今年度のグッドデザイン賞のテーマは、「アウトカムがあるデザイン」。アウトカムは、 「結果、成果」などの意味がありますが、「アウトカムがあるデザイン」とは、デザインという大きな活動全体が、「遠くにあるひとつの未来に向かうこと」を指しているといいます。

そもそもテーマとは、毎年審査委員長のメッセージのなかで発表されるものであり、「審査の視点」に加えて、グッドデザイン賞の審査における指針のひとつとなります。

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今年度は、個々の応募対象がどんな新しい未来へ向かっているデザインなのか、またグッドデザイン賞として、デザイン業界として、どんな未来に向かっていくのか。その目指すべき未来を模索しながら審査が行われていく予定です。

またトークのなかでは、新しい未来を目指すデザインといっても「無理をして壮大な社会課題を掲げる必要はない」とも話されていました。地球環境への問題意識からうまれているデザインから、ささやかだけれど日々の生活をよくするデザインまで。スケールの大きさは関係なく、未来に向かって想いを実現するデザインが期待されています。

応募からはじまる新しい可能性

ほかにもトークからは、グッドデザイン賞に応募することの新しい価値といえるような発見がありました。グッドデザイン賞の「受賞メリット」は、受賞作の認知度向上や販売促進などさまざまありますが、ほかにも以下の3つの価値があるのではないのでしょうか。

-1- 新しい試みを社会に、業界に、定着させる入り口をつくる -2- 自分のいる業界外からの考察・評価によって新しい可能性を発見できる -3- グッドデザイン賞という“コミュニティ”への参加

まず1つ目については、トークのなかでグッドデザイン賞の役割のひとつは「新しいアイデアが実現されたことを評価する賞である」と話されていました。社会的にも業界的にもこんな方向に向かっていくといいのでは、という目標をグッドデザイン賞が評価し、社会に定着していくことを目指しています。

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2つ目は、約100人弱の審査委員の多様さからもたらされる価値です。副委員長の倉本仁さん自身も「審査委員になるまでは“デザイナー”だけが審査していると思っていた」と話されていましたが、審査にはデザイナーをはじめとして、専門家や経営者など、直接的に「デザイン」をしている人だけではないさまざまなプロフェッショナルが集まっています。そのため、幅広い角度からの評価で受賞作が決まっていきます。これだけ多様な専門性を持ってひとつのデザインを審査するアワードは世界的にも珍しいといいます。また二次審査会では、応募者が審査委員にプレゼンテーションをする場合もあり、応募することで新しい発見に満ちたプロセスがあります。

3つ目のコミュニティとは、Discordを活用した参加型イベントの開催や、受賞祝賀会のように、グッドデザイン賞を通じて応募者、受賞者同士が交流できる場を意味します。グッドデザイン賞の横のつながりから新しい活動が生み出されるようなコミュニティを目指しています。

応募は5月24日(水)13:00まで!

グッドデザイン賞の応募はほぼWebで完結することができ、また受賞者の40%が初応募です。昨年、愛知県国際展示場で行っていた二次審査会は、今年は幕張メッセで実施。すべての対象を集めて実際に見たり触ったりしながら、審査を行います。また受賞展も2019年以来4年ぶりに東京ミッドタウン全館を使ったすべての受賞作の展示が復活!ほかにも新しい試みがさまざまはじまり、ますますおもしろくなるグッドデザイン賞を今後もレポートしていきます。

大橋真紀

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。