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グッドデザイン賞の “今”を届ける

グッドデザイン賞の応募に込めた想い、 グッドデザイン賞の審査に込める想い、 さまざまな想いが交差し、連鎖する

「よいデザイン」を探求する プロセスを届ける

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グッドデザイン賞はなぜ「デザインへの提言」に取り組むのか?-フォーカス・イシューの役割とは-

2025.02.14

グッドデザイン賞は、デザインを通じて私たちの暮らしや社会をより良くすることを目的としています。だからこそ、その活動は「デザインの審査」だけにとどまりません。

グッドデザイン賞の重要な役割の一つには、次なる社会に向けた可能性や課題の発見があります。「フォーカス・イシュー」はこの役割を担うために生まれた取り組みです。今回は、フォーカス・イシューの活動に伴走する担当者への取材をもとにその意義やプロセスを掘り下げます。


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グッドデザイン賞とフォーカス・イシュー

「デザイン」という言葉から、どんなものを思い浮かべますか? グラフィックやファッション、家具家電にとどまらず、システムづくりや地域活動など、デザインの領域は多岐にわたります。その多様性が広がるなか、特定の分野に限定せず、総合的にデザインを評価・推奨するのが「グッドデザイン賞」です。

幅広いデザインを対象に、「よいデザイン」を評価・推奨するプロセスは、「発見」「共有」「創造」のサイクルになっています。

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グッドデザイン賞の審査を通じて新たな「発見」をし、それをGマークとともに社会と「共有」、そして次なる「創造」へとつなげていく。この流れをより深め、社会におけるデザインの役割を探究する取り組みが「フォーカス・イシュー」です。

審査とともに応募対象を観察し、審査後に総括としてテーマを抽出。デザインが果たす役割や意義、その可能性について思索を重ね、毎年「提言」として発表しています。

また、2024年度からは、前年のフォーカス・イシューのテーマが翌年のグッドデザイン賞のメッセージとして引き継がれるなど、両者の連携がより強くなっています。

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フォーカス・イシューの探索プロセス

フォーカス・イシューが始まったのは、2015年。その活動内容は、「次なる社会に向けた可能性や課題の発見」という目的のもと、変化を重ねながら展開してきました。今回は、近年の提言発表までのプロセスをご紹介します。

まずフォーカス・イシューを担当するチームは、その年の正副委員長がフォーカス・イシュー・ディレクターを務め、さらに外部有識者から選ばれたフォーカス・イシュー・リサーチャー数名で構成されます。

リサーチャーには、それぞれの専門的な知見を活かし、デザイン・政治・行政・企業などにどのような態度や動きが求められるのかという問いに対し、幅広いステークホルダーに向けた提言をより社会に響くものにする役割が期待されています。

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2024年度のフォーカス・イシュー・メンバー

このチームで約1年間活動し、提言作成。そのプロセスは大きく4段階に分かれます。

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現在のフォーカス・イシューのプロセス

STEP1では、グッドデザイン賞の一次審査からはじまり、通常の審査プロセスとは別に、すべての審査対象をそれぞれの専門性や切り口から観察します。

STEP2では、審査を通じて見えてきた論点をもとに、探求すべき「イシュー」を設定。チーム全体でひとつに絞るのではなく、各メンバーがそれぞれの視点でイシューを定めます。

STEP3では、ディレクター・リサーチャーが設定したイシューに基づき、受賞者や有識者への取材を実施。さらに、裏付けとなる事実調査なども行います。

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受賞者取材の様子をまとめた記事。

そして、STEP4でこれまでの議論や調査の成果をまとめ、最終提言として発表します。

フォーカス・イシューの探索は、日本で唯一「総合的なデザイン」を対象とするグッドデザイン賞だからこそ可能な、俯瞰的な視点を活かした取り組みです。その視点を通じて、未来のための問いを立て続ける議論の軌跡でもあります。

今年度は「はじめの一歩から ひろがるデザイン」

2024年度のフォーカス・イシューのテーマは「はじめの一歩から ひろがるデザイン」に決定しました。デザインが生まれる前の“思考”や“活動”、さらにその源流に光を当てたい──そんな思いから設定されたテーマです。テーマの詳細については、こちらの記事で詳しく解説されています。

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また今年度も、それぞれが定めたイシューをもとに、受賞者9組へのインタビューを実施。受賞対象が誕生した背景をはじめ、ビジネス構造や関わる人々の想いや葛藤に至るまで、多岐にわたる対話が交わされました。

フォーカス・イシューの活動を伴走するグッドデザイン賞の担当者も、インタビューを振り返り、「Webサイトで受賞対象を眺めているだけではわからない、受賞者の切実な課題感や、デザインにおける工夫がありありと伝わってきました。どのプロジェクトもその“はじめの一歩”は、個人の抱える希望や願い、または怒りや疑問といった熱い想いから始まっています。形は違っても、社会をよりよいものにしようとするその姿勢によって、最初は個人から始まったデザインが、影響する範囲を広げ、多くの人々へ伝播していく様子が伺えました」と語っています。

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受賞者へのZOOM取材の様子

さらに今年度は、有識者としてオードリー・タン氏、アルトゥーロ・エスコバル氏、入山章栄氏と対談。デザインの枠を超えた多角的な視点が加わりました。

10年目を迎える今年。最終提言は2月25日発表!

2024年度のフォーカス・イシューの提言は、2月25日に発表予定です。提言はWebでダウンロードできるほか、冊子でもご覧いただける予定です。

また、3月には東京ミッドタウン・デザインハブで展示会が開催されます。展示会では提言の背景の深掘りや、受賞対象の紹介などが予定されています。

デザインは今後どのような可能性を持ち、私たちの暮らしや社会をよりよくしていけるのか、次のアクションへのヒントを与えてくれるはずです。お楽しみに!

大橋真紀

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。

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