暮らしに根付いた愛され続けるデザイン「ロングライフデザイン賞」とは?
2026.4.17
長きにわたり、多くの人々に支持されているスタンダードなデザインに贈られる「ロングライフデザイン賞」。2026年度の応募受付が、いよいよ4月1日よりスタートしました。企業による自社製品の応募はもちろん、長く愛用している商品やお気に入りのデザインについて、ユーザーの皆さまからの推薦も受け付けています。今回は、ロングライフデザイン賞とその歴代の受賞対象についてご紹介します。
ロングライフデザイン賞とは

毎日の生活で欠かせない道具、見慣れた景色の一部になっている建物、生活になくてはならないサービス。そんな、時代を超えて多くの人々に愛され続けてきたデザインを讃えるのが「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞(以下ロングライフデザイン賞)」です。 この賞は、10年以上にわたって販売や供給が継続し、すでに認められた価値がこれからも提供されると想定できるものが対象です。社会に良い影響を与えてきたデザインに注目し、使いやすさや美しさを兼ね備えたデザインを作り続けている人々や企業を讃えます。そして、この賞を通じて、これから生まれる未来のデザインのモデルを示すことも目的としています。受賞の選定では、以下のような視点を大切にしています。
・革新性:新しい機能や役割をもたらしたか ・信頼性:人々から支持され信頼を得ているか ・普遍性:スタンダードとしての価値を有しているか ・規範性:次の時代やデザインのモデルとなったか ・将来性:これから先の社会に与える影響や効果が適正であるか
審査では、後世に繋がるようなデザインであるか、なぜ今年度に評価すべきかという時代性、そしてのちの時代になっても優れたデザインであるかといった視点も丁寧に議論しながら評価しています。
時代を超えて愛される多様な受賞デザインたち
1980年の開始以来、ロングライフデザイン賞は、長年にわたり多くの人々に支持され続けている様々なデザインを表彰しています。これまでに、プロダクトやWebサービス・アプリ、建築、活動・取り組みなど、幅広い分野のデザインが受賞しています。
昨年度は、通勤や通学など電車で出かける際に利用する「モバイルSuica」や、バーベキューや花火の時の必需品「チャッカマン」、荷物の受け渡しがより便利となった宅配ロッカー「フルタイムロッカー」などが受賞しました。

ここ10年でただ便利な機能が増えただけでなく、私たちの生活をよりよくしてきた「モバイルSuica」。Suicaカードの「かざす」だけで使える簡単な操作はそのままに、スマートフォンでも使えるようにしたことで、今までの使い方を大きく変えず、もっと便利になりました。これによりカードをなくす心配や、お金を機械でチャージする手間も減り、人々の毎日の生活に欠かせないものになっています。

40年も前から使われているライター「チャッカマン」は、火をつける道具として多くの人がパッと思いつくほど有名な製品です。料理やバーベキュー、キャンドルやたき火など、いろいろな場面で使われています。ボタンを押すだけで火がつくシンプルな操作性は、子どもから大人まで使いやすいのが特長です。長い歴史の中で改良が続けられ、使い方に合わせたいろいろな種類が展開され、それぞれの製品に共通したわかりやすいデザインのルールが感じられます。安全で使いやすく、無駄のない形と操作のしやすさがバランスよく組み合わさっている、便利で美しい毎日の生活で役立つ道具です。

インターネットで簡単にいろいろなものを注文できるようになり、宅配や物流の、人手や仕組みの問題が頻発している現代。約40年前の1986年に、まるでそんな未来を見通していたかのように作られた「フルタイムロッカー」。40年前は商品が売れるかどうかを考えることが中心だった時代に、勇気を出して“はじめの一歩”を踏み出した企画者や会社の考え方が、ロングライフデザイン賞にふさわしい価値を生み出しました。「フルタイムロッカー」なら、無人で、24時間いつでも荷物を受け取ることができ、認証キーを使うので本人しか荷物を取り出せません。非対面で受け取れるので、セキュリティ面も安心。マンション管理者の負担を軽減し、配達事業者の再配達も削減、受取人の都合に合わせて自由に使える便利な仕組みです。
近年では、4〜12歳向けの番組「天才てれびくん」や、毎日の献立づくりに役立つ「キユーピー3分クッキング」などのテレビ番組の受賞事例もあります。また、テレビやラジオで放送され誰でも気軽に実践できる運動「ラジオ体操」も受賞しています。

「天才てれびくん」は、4〜12歳の子ども向けの、楽しく学べる番組です。1993年に放送が始まった当時、NHKには子ども向けの番組はあっても、子どもが主役の番組はほとんどありませんでした。そこで、小中学生の「てれび戦士」を主役に据え、毎年CGで作られたファンタジーの世界の中でさまざまなことに挑戦する姿を通して、子どもと保護者に「何かに挑戦し、成長していくことの楽しさ」や「知らない世界の面白さ」を、30年以上にわたり毎日伝え続けています。番組では、ドキュメンタリー、バラエティ、ドラマ、ゲームなどいろいろな方法で、見ている子どもたちが飽きない工夫がされ、電話アンケートやデータ放送などの新しい技術を用いて、子どもたちと番組がやり取りできる仕組みも展開されています。

テレビコンテンツとしては初めてのロングライフデザイン賞となる「キユーピー3分クッキング」は、毎日のごはんづくりに悩むお母さんたちのお手伝いをしたい、食品メーカーとして食文化に貢献したいという思いからスタート。はじめはテレビ局の放送ネットワークがなかったということに加え、入手できる食材に地域差がある時代にエリアごとの食風土に合わせたメニューをお届けするため、北海道・宮城・東京・愛知・福岡の地方局がそれぞれ独自に番組を制作していました。 その後、テレビのネットワークや流通の発展により、今は2つの系列にまとまって放送されています。

「ラジオ体操」は、なんと90年以上も続いている日本の多くの人々が知っている体操です。1928年に「国民保健体操」として始まり、ラジオで広く紹介されました。1951〜1952年に「ラジオ体操第一・第二」として今の形に整えられ、誰でも気軽にできる運動として、今でもたくさんの人に親しまれています。ラジオ体操のポイントは「いつでも」「どこでも」「だれでも」できることです。体の仕組みにあわせて全身の筋肉をまんべんなく動かすように工夫されており、学校や職場、家庭などさまざまな場所で行えます。これにより、体の健康だけでなく、心の健康や地域コミュニティの活性化にも役立ってきました。
これらの例を見ると、長い時間を経ても時代に左右されず、人々の生活や記憶に残るデザインには、その時代らしさや特徴がわかります。 なぜそのデザインが親しまれ、愛され続けてきたのかを知ると、その時代の考え方や暮らし、流行が見えてきて、当時の人々の思い出や暮らしの様子もよみがえります。
受賞でぐっと広がる価値とさらなる可能性
ロングライフデザイン賞を受賞することで、次のようなさまざまなサポートを受けられます。
・エントリー費用、受賞後のオリジナルロゴマーク使用料が無料 ・表彰状・トロフィーの贈呈 ・グッドデザイン賞受賞展への出展 ・受賞年鑑への掲載 ・販売・流通機会の提供
受賞ロゴマークを使用することで「よいデザイン」であるという信頼性が高まります。また、展示や年鑑への掲載であらためてそのデザインの価値が伝えられ、さらなる認知度の向上につながるチャンスも広がります。
誰でも気軽に推薦できる!ロングライフデザイン賞
ロングライフデザイン賞では、企業による自社製品の応募はもちろん、長く愛用しているデザインについてユーザーの皆さまからの推薦も受け付けています。 ※推薦された対象が全て受賞に至るということではありませんのでご留意ください。
ユーザー推薦・自社製品の応募はこちらから
ロングライフデザイン賞は、長く愛される良いデザインの普及を通じて、人々の暮らしをより豊かにすることを目指しています。そして、持続可能でよりよい社会の実現にも貢献しています。10年以上続いているデザインが応募対象のため、今年度は2017年以前に生まれ、今も使われているデザインが対象です。
受賞デザインを調べてみると、実はこんなものまでロングライフデザイン賞に選ばれていたのか!と驚く発見があります。そして、自分の生活の中で何気なく使っているモノやサービスが、実はとても優れたデザインだと気づくことがあります。

2014年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞「PlayStation®用コントローラー」・2018年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞「チキンラーメン」・2013年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞「ポスト・イット®ノート」
あなたの身のまわりにも、長く愛用しているのにまだロングライフデザイン賞として讃えられていない素敵なデザインが眠っているかもしれません。日常の身近なモノやサービスの中に、2026年度のロングライフデザイン賞を受賞するデザインが見つかる可能性もあります。件数に制限はありませんので、気軽に楽しみながら探して、ぜひどんどん推薦してみてください!
ロングライフデザイン賞は、長く愛され続けるデザインを讃え、応募や審査の過程を通して、これからの「スタンダード」を生み出す場でもあります。
2026年度の応募は4月1日から受付中!皆さまの暮らしや社会をより良くするデザインのご応募をお待ちしています。
朝倉千恵子
執筆
書店で働きながら本や映像を制作する。TABF2025に参加。チェルフィッチュ『三月の5日間リクリエーション』や『リビングルームのメタモルフォーシス』に参加するなど俳優としても活動している。
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