2026年度 グッドデザイン賞 二次審査会+ベスト100選考会現場レポート 3日間に及ぶ白熱の審査
2026.8.21
真夏の暑さが続くなか、2026年度グッドデザイン賞の二次審査会は、外の気温にも負けない熱気に包まれました。広い会場に並んだ数千点もの応募デザイン。審査委員たちは、実際に手に取って使ってみたり、意見を交わしたりしながら、一つひとつのデザインに真剣に向き合い、審査しました。そしてついに、長時間にわたる審査を経て、二次審査通過対象(受賞内定)が決定!さらに最終日には、「グッドデザイン・ベスト100」の選考、確認会も行われました。

8月5日から7日までの3日間にわたって行われた二次審査会。ユニットごとに膨大な数の応募対象が並ぶ広大な会場で、審査委員たちは朝早くから日没まで、とことん議論を交わし審査を行います。

会場では、日用品や家具・家電など、実物を持ち込めるものは実際の商品を展示。会場への搬入が難しいものについては、パネルや建築模型、使用素材の一部を用いて展示していました。応募者が審査委員に伝えたいポイントがひと目でわかるように、要点を整理してまとめた展示が多く見られました。また、製品やサービスの仕組みなど、実物だけでは伝わりにくい内容については、仕組みのからくり模型や映像を活用するなど、デザインの特徴に合わせた工夫が施されていました。
デザインを体感して語り尽くす二次審査会
1日目と2日目は、一次審査と同様に1チーム4〜6名からなる審査ユニットごとに通過対象を決めていきます。二次審査通過対象は、グッドデザイン賞「受賞内定」となります。

二次審査会では、ユニットごとに審査委員がテーブルを囲み、応募対象について活発な議論を交わします。全員で応募対象の前まで足を運び、実際にデザインを手に取りながら、見た目の美しさだけでなく、手触りや使い心地まで確かめ、感じたことを共有します。実際の普及率や実績なども踏まえながら、道具としての使いやすさやデザインとしてのまとまりはもちろん、そのデザインがユーザーの生活に合っているのか、どのような価値をもたらすのか。さまざまな角度からデザインを観察し、丁寧に議論を重ねていきます。

海外からも審査委員が現地参加。多言語が飛び交うなか、それぞれの文化や価値観を共有しながら、応募対象について慎重に議論し、全員が納得できる結論を導き出します。

ユニット9の審査に参加したEdward Barberさんは「デザインの多様性を見ることができて、新しく革新的なプロダクトにも出会うことができました。日本やアジアとヨーロッパとのデザインの違いも明確に感じられました。」と語りました。
また、同じユニットを担当したFelix Conranさんは「たくさんのデザインが集まった中で、審査の仕組みも新鮮で、とても興味深く、楽しみながら参加しました。」と話し、続けて、「デザインの良さを審査する際には、自分が働いているスタジオで大切にしている基準を意識しました。普段から、どのような条件を満たすべきかを考え、それが自分たちのプロダクトの基準にもなっています。今回の審査でも、そうした視点も大切にしながら、一つひとつのデザインを見ました。」と審査について語りました。

各ユニットのテーブルには正副審査委員長も加わり、審査委員からこれまでの議論や審査を通して見えてきた傾向・特徴について話を聞きます。まずは今年度の応募全体を振り返り、それぞれのユニットがどのようなデザインを「グッドデザイン・ベスト100」に推薦したいと考えているのかについて意見を交わしました。
中川審査委員長からは、ビジョンとデザインの関係や、経営の視点からデザインを捉えることについて話があり、ユニットリーダーからも、今年度のメッセージである、“ビジョンに資するデザイン”について、改めて問いかける場面が見られました。

一次審査に引き続き、学生サポートスタッフも審査に参加。審査委員の近くで議論や審査の視点に触れた学生は、「審査委員の方々がデザインのどのような点に着目しているのかを知り、制作に対する視野が広がりました。デザインがつくる地域や人との結びつきについても学ぶことができ、これからの制作につながる学びがありました。」と話しました。
ついに「グッドデザイン・ベスト100」選出へ

審査最終日である3日目は、二次審査通過対象のなかから審査ユニットごとに「グッドデザイン・ベスト100」の候補を選抜します。
「グッドデザイン・ベスト100」候補に選ばれた応募対象の前まで全員で足を運び、各ユニットのリーダー(審査ユニットの代表者)が、自分たちの選出した候補について、他分野のユニットリーダーに向けて1点ずつプレゼンテーションを行います。

選ばれたデザインの概要や、どのような点を評価しているのか。各ユニットの審査委員全員でまとめた意見を、ユニットリーダーが代表して話します。実物の展示が難しい応募対象については、国内外問わず現地まで足を運び、実際にデザインを見てきたという審査委員も。正副審査委員長や他分野のユニットリーダーたちは、熱のこもったプレゼンにうなずきながら耳を傾け、ときにはメモを取ったり感嘆の声を上げるなど、真剣な眼差しで発表を聞いていました。

そして、会場を移動し、先ほどのプレゼンを元に「グッドデザイン賞ベスト100」確認会がスタート。
はじめに、各ユニットのリーダーがマイクを持ち、ユニットに寄せられたデザインの傾向や特徴、ユニット内で交わされた議論や問い、選定の際に重視した点について共有しました。 そこからユニット内で感じていた疑問を他のユニットに投げかけ、意見を求めます。さらに、「この賞を受賞したら、誰が喜ぶのだろう?」と、その先にいる人たちまで想像しながら議論する姿も見られました。

ユニットリーダーたちは各ユニットで大切にしている考え方や言葉を用いて、他のユニットに意見やエールを送るなど、ユニットを越えたやり取りも生まれました。議論や審査を通して浮かんだ疑問を、審査委員たちにフォーカス・イシュー・リサーチャーである中村 寛さんが質問する場面もありました。
議論はさらに、応募されたデザインはどのようなプロセスを経て生まれたのか、グッドデザイン賞はどうあるべきなのかといったテーマへと広がっていきます。デザインとアートの違いや、デザインとは何かという本質に迫る議論も繰り広げられました。

鈴木審査副委員長は「これまでプロダクト系の審査でよく使われていた「モノ」と「コト」という言葉が、今回はあまり出てこなかったのが印象的でした。それはもしかすると、「ビジョン」という考え方が「コト」につながっていたからなのかもしれません。マーケティングが今を捉えるものだとすれば、ビジョンはもっと長い時間軸で未来を見ていくもの。今回は、そうした長い視点についても語り合うことができました。審査の中に「ビジョン」という視点が入り、それをもとに議論できたことは、とても意義深かったと思います。」と今年度の新たな審査傾向も織り交ぜながら説明しました。

最後に中川審査委員長は「審査委員の皆さんには、温かくも厳しい審査の視点がありました。審査には、応募されたデザインを世の中に届けることで、社会がより良くなってほしいという審査委員の想いや、応募されたデザインへのエールが込められている。審査委員の皆さんの話を聞いているだけでも、多くの学びや気づきがあります。賞としては、結果がつくものですが、それだけではない価値のある場だと感じました。」とグッドデザイン賞の審査に込められた想いについて語りました。
「デザインと経営がつながることで、乗り越えていけることもたくさんある。今日、議論したようなことやグッドデザインに選定したデザインの価値を、デザイナーだけでなく、生活者や経営者にもどうやって届けていくのか。デザインがきちんと生活者のもとに届き、実際に使われ、喜んでもらう。その結果として、応募した企業にも価値が返ってくることが理想的です。これからは、デザインそのものだけでなく、ここで生まれた議論や価値を、より多くの人に届けていくことついても考えていきたいと思います。」と締めくくりました。
二次審査の結果は、8月25日に通知
二次審査の結果は8月25日に各応募者へ通知されます。二次審査通過者は公開情報・受賞展展示情報の登録の完了後、ベスト100プレゼンテーション審査の準備がはじまります。

ベスト100プレゼンテーション審査を経て、グッドデザイン金賞などの特別賞が決定していきます。

朝倉千恵子
執筆
書店で働きながら本や映像を制作する。TABF2025に参加。チェルフィッチュ『三月の5日間リクリエーション』や『リビングルームのメタモルフォーシス』に参加するなど俳優としても活動している。
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