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グッドデザイン賞の応募に込めた想い、 グッドデザイン賞の審査に込める想い、 さまざまな想いが交差し、連鎖する

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2025年度 グッドデザイン賞 発表!大賞は、建築家・坂茂氏らの「DLT木造仮設住宅」

2025.10.15

2025年度のグッドデザイン賞が10月15日に発表されました。今年度は、グッドデザイン・ベスト100や金賞とともに「グッドデザイン大賞」も同日に発表。その年の受賞対象のなかで最も優れたデザイン1件に贈られる大賞に輝いたのは、坂茂建築設計、株式会社家元、株式会社長谷川萬治商店のDLT(Dowel Laminated Timber)木造仮設住宅。受賞記者発表会では、建築家の坂茂さんが登壇し、喜びとともに受賞の思いを語りました。


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受賞者のスピーチと質疑応答の様子

5,225件の審査対象から1,619件が受賞

今年度のグッドデザイン賞は、「はじめの一歩から ひろがるデザイン」をテーマに掲げ、約半年にわたる厳正な審査を実施。 5,225件に及ぶ審査対象のなかから、1,619件(1,142社)の受賞対象が選出されました。これは、グッドデザイン賞史上、最多の受賞数です。また「2025年日本国際博覧会」の開催を契機として「未来社会デザイン特別賞」を新設し、1件が選出されました。

すべての受賞結果はこちら:https://www.g-mark.org/gallery/winners

より公平で深い議論へ。大賞まで審査委員のみで選出

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グッドデザイン賞は、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨のしくみです。多様なデザインを等しく見つめるために、時代や社会の変化にあわせて少しずつ進化を重ね、より公平で開かれた評価のあり方を追求し続けています。

今年度はその一環として大賞選出方法が新しくなりました。これまで受賞祝賀会の場で、受賞者と審査委員によって「大賞選出会」が行われてきましたが、今年度からは、9月の特別賞審査会にて、審査委員が大賞までを選出する方式に変更されました。国内外で活躍するデザイナーや専門家がより深く、一貫した評価を行うことを目的としています。

大賞の候補となるのは、各ユニットから1件ずつ選ばれた金賞の20件。

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大賞選出には、審査委員長・副委員長・ユニットリーダーを合わせた23名が参加し、すべての大賞候補のプレゼンテーションを聴いた上でディスカッションと投票が行われました。

初回投票では審査委員が一人1票ずつ投票し、「ホタルが舞い、水中花が咲く清流・源兵衛川 ~三島の宝が世界の宝に!世界かんがい施設遺産~」が7票、「Ginza Sony Park Project (銀座ソニーパークプロジェクト)」が5票、「DLT木造仮設住宅」が4票を獲得。その後、議論と投票を重ねるなかで、大賞候補は三島市・源兵衛川のプロジェクトとDLT木造仮設住宅の2件に集約され、最終的に両者による決選投票が実施されました。結果、DLT木造仮設住宅が過半数を得て、大賞に決定しました。

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DLTを箱型のユニットにして積むことで一般作業員でも建てられる仮設住宅。天然の木の香りが漂い、入居者からは「気分が落ち着く」などの声が寄せられた。

受賞を通して伝えるメッセージ

大賞の審査では、候補となったデザインの背景や社会的な意義、今後への期待などが丁寧に共有されました。議論のなかでは、得票数の多いデザインだけでなく、最初は票が少なかったデザインについても、どこが優れているかをさまざまな角度から伝え合うことで理解が深まり、評価が変化していく場面も多く見られました。

DLT木造仮設住宅については、坂さんの活動に対し「東日本大震災をはじめ海外の被災地にも足を運び、デザイナー・建築家として“自ら動く”“はじめの一歩”を体現している。誰かに頼まれる前に行動し、そのための準備を常にしていることが本当にすばらしい」とコメントがあり、そこから仮設住宅とされているが常設化できる構造を持っていることや、新しい素材への挑戦などについても次々と意見が交わされ、共感が広がっていきました。

審査会の最後には、副委員長の永山さんから「今年度の印象的だった言葉として“もう一度当たり前を考え直す”というキーワードがあった」「長年続くデザインや活動が、改めて次のステージに進みたいということで賞に応募してくれた。この賞に応募することで世間に何かメッセージを発しようとしてくれている場になっていることに感銘を受けた。そうした場づくりは重要であり、グッドデザイン賞には良いプラットフォームができていることを改めて実感しました」とコメントがありました。

応募対象一つひとつが、受賞を通して今後のデザインや社会に向けたメッセージを発し、未来へとつながる創造の連鎖を生み出すという、グッドデザイン賞の役割を改めて感じられました。

「ここに住めてよかった」と思える恒久仮設住宅

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今年度の大賞に輝いた「DLT木造仮設住宅」は、2024年の能登半島地震の際に建設されました。DLT(Dowel Laminated Timber)とは、木材に穴をあけて並べたものに木ダボを挿し込んで接着剤を使わずにパネル化したものであり、それらを箱型のユニットにして積み上げることで工期を短縮。また被災地で専門職が不足するなか、大型設備を使わず組み建てられることにより一般作業員でも施工可能にしました。

受賞スピーチで、建築家の坂茂さんは「私たちはこれまで、復興よりも前の段階、緊急時の避難所や仮設住宅の建設に関わってきました。今回受賞した『DLT』は、長谷川萬治商店さんがスイスから輸入し、開発を続けていたので、今回の能登半島地震の際にもすぐに活用することができた。実際に避難所で生活されている皆さんからは「ここに住めてよかった」と言ってもらえました。

今回の取り組みは、3社の協力があってこそ。また急に始めたわけではなく、ずっと準備を続けてきたから実現しました。本当に素晴らしい賞をいただき、ありがとうございました」と受賞の喜びを語りました。

今後は、戸建タイプやアパートタイプの「復興住宅」の開発にも取り組んでいく予定で、その復興住宅には大阪・関西万博のシンボルである大屋根リングの木材を再利用する計画も発表。こうした新たな取り組みを通じて、復興支援への想いを新たにしていました。

今年度のグッドデザイン賞は「継続と進化」に注目

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齋藤委員長は大賞の選考理由について「受賞者である坂さんをはじめ、株式会社家元さん、株式会社長谷川萬治商店さんは、阪神・淡路大震災から30年以上にわたり被災地への活動を続けてこられました。長年にわたる歩みと、時代に合わせて地域で、また日本だけでなく世界で、困っている人を支える姿勢に深く感銘を受け、敬意をもって今回の大賞に選定しました」とコメントをし、今年度のグッドデザイン賞は全体としても「継続と進化」がポイントとなったと語りました。

「メッセージの「はじめの一歩から ひろがるデザイン」のうち、「はじめの一歩」はグッドデザイン賞が大切にしてきた“新しい芽を愛でる”という特徴を示しています。今年度はとくに一歩のあとの「ひろがる」の部分に注目しました。ひろがっているデザインは数多く存在しますが、そのひろがりには限界もあります。その限界をどう突破するかが、今後のデザインの鍵となるのではないか。文化としても、経済活動としても、この“ひろがり”を支えるために、よりいっそう「デザインの力」が求められる。今年度の審査を通じて、そうした新しいフェーズに入ったことを強く感じました」と総評を述べました。

11月1日から2025年度の受賞展開催!

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11月1日(土)〜11月5日(水)に、東京・六本木の東京ミッドタウンにて、 「見て、触って、楽しんで、学べて、買える」国内最大級のデザインイベント 「2025年度グッドデザイン賞受賞展」を開催します。

本展では、2025年度グッドデザイン賞の受賞対象すべてが展示されます。B1Fでは「グッドデザイン・ベスト100」などの展示を行うほか、 4Fカンファレンスでは、審査委員が個人的な視点で選ぶ「私の選んだ一品」を紹介。さらに、5Fデザインハブでは、受賞者や審査委員によるトークイベントを開催。そして会場をめぐるスタンプラリーも実施予定です。

また昨年度から始まった来場者投票企画「みんなの選んだグッドデザイン」も開催します。ぜひ会場でお気に入りのデザインに投票し、参加をお楽しみください。

「2025年度グッドデザイン賞受賞展」 会期 11月1日(土)~11月5日(水) 時間 11:00~19:00(11/1は13時開場・11/5は18時閉場) 会場 東京ミッドタウン(東京都港区赤坂9-7-1)B1F ホール・アトリウム/4F カンファレンス/5F デザインハブ 主催 公益財団法人日本デザイン振興会 URL:https://www.g-mark.org/learn/past-awards/gda-2025/gde2025

「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA 」POP UP STORE 期間 11月1日(土)~11月5日(水)  時間 11:00~20:00(11/1は13時開場・11/5は18時閉場) 会場 東京ミッドタウン・ガレリア B1F アトリウム 運営 野原グループ株式会社

大橋真紀

編集・執筆

ウェブメディア「.g Good Design Journal」の編集チームのメンバー。外部メンバーとして、コンテンツの企画や編集、執筆を行う。

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