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2025年度 グッドデザイン賞 二次審査会+ベスト100選考会現場レポート 多様な視点と熱量が交差した3日間

2025.08.22

2025年度グッドデザイン賞の二次審査会が、熱気あふれる雰囲気の中で行われました。広大な会場には数千点にもおよぶ応募作品が並び、審査委員たちは実際に手に取って使ってみながら、一つひとつを丁寧に審査。真剣な眼差しで議論を重ね、選考が進められました。そしてついに、長時間にわたる審査の末、二次審査通過対象(受賞内定)が決定!さらに最終日には、「グッドデザイン・ベスト100」の選考会も行われました。


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8月6日から8日の3日間にかけて行われた二次審査会。ユニットごとに膨大な数の応募対象が並ぶ広大な会場で、審査委員たちは朝早くから集まり日没までとことん議論を交わし審査を行います。

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会場では自転車や電動キックボードでスピーディーに移動する姿も。

日用品や家具家電、自動車などの現物の展示が可能なものは実際の製品を展示。現物の展示が難しい場合には、パネルや建築模型、素材のサンプルなどを用いて展示されていました。各ユニットでは、審査委員に伝えたいポイントが分かりやすく的確に伝わるように、補足資料や説明映像を活用したり虫眼鏡を使って細部を見せたりするなど、デザインの意図や魅力を効果的に表現するアイデアが随所に見られました。

体験し、語りつくす、密度の濃い時間が続く二次審査会

1日目と2日目は、一次審査と同様に1チーム4〜6名からなる審査ユニットごとに通過対象を決めていきます。二次審査通過対象は、グッドデザイン賞「受賞内定」となります。

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二次審査会では、応募されたデザインが取り組みとしてどのように位置づけられているのか、また今までの経緯、これから広がって行くデザインの可能性や発展性まで丁寧に確認されます。審査委員たちは実際に手に取って使ってみたときの使いやすさや、誰のためのデザインなのかといった視点からも検証。資料を何度も見返しながら一つひとつ真摯に議論を重ねていきます。エントリーは国内外から多岐にわたり、使われている素材や価格帯まで含めて、細部まで徹底的に検討が行われていました。

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審査対象を実際に使用する審査委員たち。

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一次審査に引き続き、学生サポートスタッフも参加。審査委員一人につき一人ずつ付き添い、メモを取ったり資料をまとめるなど、審査のサポートを行う。

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ユニットごとに机を囲んで議論が行われる。それぞれの机の近くにはグッドデザイン賞の理念や審査の視点を示したパネルも設置。議論の方向性を共有し、審査の一貫性にもつながっている。

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海外の審査委員も加わり、文化の違いやグッドデザイン賞の審査基準に目を向けながら、慎重に全員が納得できるまで議論が交わされていきます。多様な価値観がぶつかり合いながら、より深い審査が行われていました。

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海外の審査委員同士のユニットの枠を超えた交流も。

審査最終日、「グッドデザイン・ベスト100」選出へ

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いよいよ3日目は、二次審査通過対象のなかから審査ユニットごとに「グッドデザイン・ベスト100」の候補を選抜。

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この日も朝早くから集合。最終日は全員でラジオ体操で体をほぐしてから審査スタート!

「グッドデザイン・ベスト100」候補に選ばれた応募対象の前まで全員で足を運びます。各ユニットのリーダー(審査ユニットの代表者)が、自分たちの選出した候補について、他分野のユニットリーダーに向けて1点ずつプレゼンテーションを行います。

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「グッドデザイン・ベスト100」候補の資料がまとめられたiPadとトランシーバーが配布され、手元で資料を確認しながら、ユニットリーダーの言葉を聞き逃さないようにする工夫も。

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限られた時間の中でプレゼンを行うため、ユニットリーダーが一息で説明を続け、思わず息切れしてしまう場面も。選ばれたデザインの概要とどこがグッドデザインに相応しいのかユニットごとの視点と言葉で語られました。環境のことや人の暮らしに関するユニットでは実際に出かけて現場を見に行ったという審査委員も。応募対象を責任を持って他分野のユニットリーダーに伝えたいという強く熱い想いや、“はじめの一歩”や“ひろがるデザイン”という言葉を使いながら他人事ではなく自分事として語る姿がとても印象的でした。

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そして、先ほどのプレゼンを元に「グッドデザイン・ベスト100」選考会がスタート。

はじめに審査委員長の齋藤精一さんは、「この賞の応募にはものすごい数の人々が携わっています。私たちは、その人数分の責任を背負い、ベスト100やその他の特別賞の決定に臨まなければならない。ぜひ撤去時に実際の現場を見て、応募者の方々の熱量を感じてほしいと思います」と、審査に対する姿勢と、この賞は参加者全員で作り上げているという思いを語りました。

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続いて、ユニットリーダーひとりずつにマイクが渡され、各ユニット内でどのような議論や問いがあったのか、どのような視点で候補を選定したのかが共有されました。議論の背景や評価の観点を明らかにすることで、審査委員全体の理解と納得感、そこから新たに生まれる疑問についても深まっていきます。

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審査副委員長の倉本仁さんは、「今年度の審査は、昨年にも増して審査方法がよりソリッドになっていました。社会にひらいて接続していく点を評価するユニットだったり、一方でデザインのクオリティに注目して評価するユニットもあった」とユニットリーダーたちの言葉や審査過程から見えてきた各ユニットの多様な視点の遠近感について語られました。

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数時間に及ぶ議論の中では今一度、審査委員全員でGマークの価値についてやグッドデザイン賞のあり方について問い直す場面も。また応募者の方へ向けた今後のフィードバック方法についても意見が交わされました。グッドデザイン賞に応募して良かった、応募したことが次につながるように、という願いが議論を白熱させていました。

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今年度インハウスデザイナーとして参加した審査委員の石川慶文さんは、「グッドデザイン賞事務局が設計した審査システムに驚きと感動を覚えた。緻密なスケジューリングや学生のサポート体制、審査委員長の柔軟な声かけにより、安心して審査に集中できた」と振り返ります。

「また、3日間を通じて他の審査委員たちが、一つひとつの応募対象に対して驚くほど丁寧に、熱意を持って向き合っている姿を目の当たりにし、その姿勢に深い感銘を受けた。異なるユニット同士の発言から応募傾向の共通点も見え、なぜフォーカス・イシューが生まれたのかを初めて実感できた。何のためにグッドデザイン賞にエントリーするのか。それは、一人ひとりのデザイナーの研鑽のためなのだと、あらためて確信した。デザインについて深く考える、貴重な時間だった」と語りました。

最後に齋藤さんは「グッドデザイン賞は、見た目の美しさにとどまらず、社会性や牽引性を持ったデザインに重きを置いて評価しています。ある海外審査委員からは、この賞は、他とは格が違う賞との言葉が寄せられ、その言葉に誇りと喜びを感じるとともに、グッドデザイン賞が持つ価値を、より外に向けて発信していく必要があると改めて感じた」と締めくくりました。

二次審査の結果は、8月26日に通知

二次審査の結果は8月26日に各応募者へ通知されます。二次審査通過者は公開情報・受賞展展示情報の登録、そしてベスト100プレゼンテーション審査の準備がはじまります。

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ベスト100プレゼンテーション審査を経て、グッドデザイン金賞などの特別賞が決定していきます。

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グッドデザイン賞の賞の種類。

今後のスケジュールや、これからの手順は、グッドデザイン賞の公式サイトで随時ご確認ください。

朝倉 千恵子

執筆

書店で働きながら本や映像を制作する。TABF2024に参加。チェルフィッチュ『三月の5日間リクリエーション』や『リビングルームのメタモルフォーシス』に参加するなど俳優としても活動している。

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