はじめの一歩が導くデザインの未来 「フォーカス・イシュー」5月6日まで展示開催中!
2025.04.25
2024年度グッドデザイン賞の審査を通して見えてきたデザインの「うねり」。そして、その「うねり」を未来へつなげるためのヒントがたくさん詰まった展覧会「はじめの一歩から ひろがるデザイン展 - グッドデザイン賞2024フォーカス・イシュー -」が東京ミッドタウン・デザインハブにて開催中!また、4月9日(水)に開催された、審査の視点セミナーとフォーカス・イシューとのコラボイベントの様子もご紹介します。
現在、東京ミッドタウン・デザインハブでは、5月6日(火)まで「はじめの一歩から ひろがるデザイン展 - グッドデザイン賞2024フォーカス・イシュー -」を開催しています。 本展では、2024年度フォーカス・イシューのテーマ「はじめの一歩から ひろがるデザイン」に焦点を当て、6つの提言とそれに関連する最新のグッドデザイン賞受賞デザインを展示しています。
そもそも、フォーカス・イシューとは?
グッドデザイン賞の大切な役割のひとつは、これからの社会に必要な可能性や課題を見つけることです。その役割を担い、いま向き合うべき重要な問いを深めるために生まれたのが「フォーカス・イシュー」という取り組みです。フォーカス・イシューでは、ディレクターとリサーチャーそれぞれが審査プロセスを通して探求すべきと考えるテーマを「イシュー」として設定。応募されたデザインを審査の中で観察しながら、そのテーマについて深く考え、これからの社会におけるデザインの意味や可能性について提言を発表します。
2024年度のフォーカス・イシューの冊子は、以下よりダウンロードすることが可能です。
2024年度グッドデザイン賞 フォーカス・イシューを総括したレポート 『FOCUSED ISSUES 2024 はじめの一歩から ひろがるデザイン』 ダウンロードはこちら
https://archive.jidp.or.jp/focusedissues/gda_focused_issues_report2024.pdf
デザインをもう一度、新たな視点から見つめ直す
展示会場では、提言のなかで紹介されている2024年度の受賞対象について映像や模型などの資料を通して、より深く知ることができます。それぞれの対象から見つかった提言の背景や関係者の想いをひもときながら、「今の自分にできるるはじめの一歩は何か?」を考える。そのためのヒントが詰まった展示です。
審査の視点を知る!「審査の視点セミナー × フォーカス・イシュー」
4月9日(水)に開催された、審査の視点セミナーとフォーカス・イシューとのコラボイベントでは、2024年度フォーカス・イシュー・リサーチャーの林亜季さん、2024年度グッドデザイン金賞を受賞した「PLUG MAGAZINE」編集長の山本佑輔さん、「メディア・コンテンツ」ユニット担当審査委員の森内大輔さんを迎え、グッドデザイン賞[メディア・コンテンツ分野]の評価ポイントを昨年度の事例をもとに伺いました。そして、現在のメディアの在り方や、応募の際のポイントについても語っていただきました。
毎年、募集期間中に開催している「審査の視点セミナー」では、審査の際の見方・考え方について、審査委員が解説
審査の評価ポイントと応募して良かったこと
2024年度にグッドデザイン金賞を受賞した岡山県発のリージョナル・マガジン「PLUG MAGAZINE」。この作品の評価ポイントとして森内さんは「ほとんど広告で埋められるような地域のミニコミ誌ではなく、ちゃんと人にフォーカスして様々な形でコンテンツにしている。岡山の人たちにとってこの雑誌があることで自分たちが住んでいる土地の誇りが喚起される。社会課題に応える、人の魅力を伝えることをかっこよく可視化することや、分厚い紙のマテリアルに落とし込むことに尊い価値がある。重さがあるものにすることの責任と覚悟を感じました」と評価のポイントを語りました。
また山本さんは応募して良かったこととして「自分たちも嬉しかったが周りの人も喜んでくれた。そして、審査のための資料作りの段階で自分たちに向き合い、商品をデザインの視点で捉え直すことができた。自分たちのことを説明する言葉が増えました」と語られました。
ひろがるメディアのかたち
メディア・コンテンツ分野の受賞対象は新聞や雑誌、WEBサイトのようなものだけでなく、もっと広い意味で捉えられています。単に情報を伝えるだけの媒体ではなく、体験をデザインするメディアも受賞しています。
2024年度受賞作品の再生処理プロダクトブランド「SALWAY」について森内さんは、「今まで人々にあまり知られていなかった行為やものをブランディングし、デザイン賞に応募したことによって、世の中にこんな医療機関のプロセスがあると明るみになるきっかけになった」と人々と医療現場の裏側までをつなぐメディアデザインの在り方について語りました。
そのほかにも、2024年度グッドデザインベスト100に選出された果物用段ボールの「フルーツボックスシリーズ」や「不二家洋菓子店のリブランディング」も消費者にものをよりよい形で届けるメディア/コンテンツデザインである例として挙げられました。
応募は「デザインとは何か」を考える機会に
応募の際のポイントとして、森内さんは「取り組みの目的やプロセスはもちろん、そのサービスを受けて豊かな体験ができるか。審美的な観点はもちろん大事ですが、それに加えて絶対にユーザーに届けたいという熱量や届け続けるんだという覚悟も期待しています。プロトタイプ段階のものではなく、きちんと社会実装されたものが見たい。
また、例えばプロダクトを伴うものなどは、触れたり聴いたりしたときに身体的に心地よいかということも大切です」と語られました。
林さんは「裾野が広い賞であるため、これはメディアではないのかもという応募対象も意外と認められているものが多いです。メディアの仕事をしている人も実はいろんなことをデザインしている。グッドデザイン賞に応募する時に改めてデザインについて捉え直し、魅力を自分たちで定義してチャレンジしてみることはとても大事なことです」と語られました。
最後に改めてとなりますが、コラボイベントでも語られた「PLUG MAGAZINE」や「SALWAY」も展示されている「はじめの一歩から ひろがるデザイン展 - グッドデザイン賞2024フォーカス・イシュー -」は東京ミッドタウン・デザインハブにて5月6日(火)まで開催中です。GW最終日まで開催中ですので、ぜひ会場で、デザインの力と可能性を感じてみてください!
また、2025年度グッドデザイン賞の応募も受付中です。グッドデザイン賞や募集について、より詳しい情報は以下からご確認いただけます。応募受付は、5月22日(木)13時まで!ぜひご応募ください。 https://archive.g-mark.org/entryguide/
朝倉千恵子
執筆
書店で働きながら本や映像を制作する。TABF2024に参加。チェルフィッチュ『三月の5日間リクリエーション』や『リビングルームのメタモルフォーシス』に参加するなど俳優としても活動している。
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